長期優良住宅制度と住宅性能表示制度の違い
前ページの「住宅性能表示制度」は耐震性や耐久性、断熱性など10の分野にわたって施主が決定した性能を、設計段階と工事段階でチェックして評価する制度ですが、「長期優良住宅制度」の認定基準は、劣化対策、耐震性、維持管理・更新の容易性、可変性、バリアフリー性、省エネルギー性、居住環境、住戸面積、維持保全計画の9つの項目があり、戸建ての木造住宅の場合は、可変性とバリアフリーを除いた7項目で基準を満たす必要があります。
長期優良住宅制度導入の背景
住宅も使い捨てではなく、良いものをきちんと手入れをして、長く大切に住むというストック型社会へ転換を図るために、2009年に「長期優良住宅の普及の促進に関する法律」が施行されました。
戦後の住宅難の解消を目的とした「量の確保」から、ストック重視への政策転換を迎え、長期にわたって使用可能な質の高い住宅ストックの形成に向けた道筋が示されました。ではなぜ、住宅の長寿命化が必要なのでしょうか。
日本の住宅の寿命は欧米に比べて極めて短く、取り壊された住宅の平均築年数は右図のように日本が30年に対し、アメリカは55年、イギリスで77年。少し古いデータではありますが、日本の住宅が短命だということがわかります。
30年の住宅ローンを完済し終えるころには、建物の資産価値はゼロということもありうる状況です。これでは住宅投資が資産にならず、単なる「消費」となるだけで、豊かな社会の発展にはつながりません。そのような理由により従来の消費型社会からストック重視型社会へと移行するために、住宅の長寿命化がこの長期優良住宅制度により提唱されたのです。
長期優良住宅の認定を受けるためには、所管行政庁に必要な図書を添え認定申請書を提出する事や、長期にわたったメンテナンスが義務付けられています。当然ながらハイスペックな住宅になるので、一般の注文住宅よりもコストも高くなります。
長期優良住宅のメリットとデメリットは?
長期優良住宅を計画する際に、まず考えたいのが耐震等級ですが、こちらをいかに満たすかが問題になる場合が多いようです。耐震等級で求められる性能の「床倍率」を満たすには、空間を区切ることが必要な場合もあり、開放的な空間を求める場合にはデメリットとなることも。
また、長期優良住宅では税制優遇等もあり、耐震等級の2か3を確保することで、地震保険料の割引が適用され、保険料の高いエリアなどではメリットがでてくることもあります。
耐震等級の認定は、住宅性能表示制度の利用でも可能ですが、長期優良住宅での認定が現段階では1番の近道かもしれません。詳細については国土交通省のサイトで確認を。
省エネや耐震性以外にも、建物の長寿命化で生まれる資産価値の向上のメリットが
長期優良住宅取得にあたっての助成金は、2011年までは「木のいえ整備促進事業」が助成金対象事業としてありましたが、2012年度より「地域型住宅ブランド化事業」が対象事業になり、長期優良住宅の認定のみではなく、ほかにも求められる条件が多様化しているので、一概に長期優良住宅に関する助成金という訳ではなくなりました。こちらを活用するには現段階では、条件が難化したように思います。
しかしながら、省エネや耐震以外にも、建物の長寿命化を図ることによる資産価値の向上など、建物全体のバランスで考えてもメリットは当然ながら大きいので、注文住宅を建てる際に取得するかしないか、検討してみてはいかがでしょうか。
建築家・岩田和哉さん