第13回
実施設計図書について
基本設計がまとまったら、さらに打ち合わせを重ね、工事を実施するために必要な実施設計図書ができあがります。前編では実施設計図書についてと平面詳細図、矩計図(かなばかりず)について、後編では、展開図、構造図、電気平面図を建築家・片岡英和さんが実際に作られた「実施設計図書」の一部を用いてチェックすべきポイントを解説をいたします。
実施設計図書とは
実施設計図書は、工事をするために必要な図面を作成するプロセス。基本設計図は100分の1の大きさですが、実施設計図はさらに詳細を図面に落としこむため、縮尺は50分の1などの縮尺をあげたものになります。
家具の高さ、棚板の枚数、コンセントの数や位置、インターネットのLANの位置から照明器具にいたるまで、住宅設備のすべてを、細部にわたりひとつひとつ決めたことを、図面に落とし込んだものです。実施設計図書の作成は2~3ヶ月かかります。
確認すべきポイントは?
設計担当の建築家と打ち合わせをした内容はもちろん、それ以外の構造や、電気配線などについても網羅されているため、住まいの規模にもよりますが、実施設計図書のボリュームは通常A2サイズで30枚以上はあります。1枚1枚建築家に説明をしてもらいながら、必ず内容に目を通すようにしましょう。
平面詳細図について
縮尺は1/50で作成されます。建物の床上1mくらいの位置(床面)から水平に俯瞰で見た構図で、柱、壁、窓、階段、家具などが描き込まれています。仕上材料の種別から下地処理の仕方、要求される遮音性能などから各壁の厚さを読み取ることができます。また、各部位の細かな寸法が書き込まれた図面(壁の厚さ、開口部、出入口)となっているので、廊下の巾や出入口の幅がどれだけあるのかや、家具は搬入できるのか等の確認をしておきたいところです。
矩計図(かなばかりず)について
矩計図は、断面詳細図ともいわれるもので、基礎の構造から土台や柱、屋根、開口の部、床、天井等の材質、素材等が確認できます。また、断熱材の有無なども確認しましょう。上材の種別、断熱材の仕様、防水方法等の性能的な確認と各仕上材(フローリング、タイル、タタミなど)の納まりから生じる段差などを確認する事ができます。しかし実際にはクライアントが矩計図を見ても読み切れない内容ばかりになりますので、建築家に対して「バリアフリー化を計りたい」「省エネルギー住宅にしたい」等の建物に求める性能を具体的に伝えるとよいでしょう。
実施設計図書は今までの打ち合わせをしてきた内容の総まとめ
実施設計図書は、今までの打合せ内容を総まとめした最終的な図面となりますので、これまでの打合せ記録の再確認と、伝え忘れた内容はないかを今一度確認しましょう。
当事務所の場合、100平米前後の一般住宅のケースで、基本設計から実施設計図書まで約3~4ヶ月程度のお時間をいただいております。お客様の要望は、基本設計の段階で要望などはほぼ落とし込んでいくので、実施設計で大きくかわることはありません。
実施設計図書をもとに工事が行われるため、なるべく細かなディティールまで描き込んでいくようにします。階段は○△を貼ってください、や、スチールの溶接はこのようにしてくださいなど、ニュアンスなども書き添えています。ページ数でいうと約50~60ページ前後のボリュームになります。
程度が低い実施設計図書ですと、工事の段階でたとえば収納の棚板が描き込まれていないのでどうしたらよいかなどのトラブルに発展する場合もあるようです。
建築家・片岡英和さん