第2回
住宅の性能を考えよう
注文住宅を建てるうえで、間取りをプランニングするのと同様に重要な要素となるのが、住宅の性能を決めること。今回は住宅の性能を図るものさしとなる「住宅性能表示制度」とストック型住宅に対応した「長期優良住宅制度」について取り上げます。
住宅性能表示制度とは
2000年に制定された「住宅性能表示制度」。建物の外観や間取り図だけではわかりにくい住宅の性能が、共通のルール(表示方法、評価方法の基準)を設けることで比較・検討することが可能となりました。
導入以前は「地震に強い家」「省エネの家」のキャッチコピーも、各ハウスメーカーや販売会社によって定義が異なるため比較が困難でしたが、住宅の性能を10項目に分け、等級や数値で示すことで、ご自身のライフスタイルにあわせて住まいの性能をプランニングすることができるようになりました。
「耐震等級は2」「維持管理対策等級は2」など、さまざまな性能をわかりやすい数値(等級)で指定できるばかりではなく、第三者のプロが設計と建設完成段階でチェックをする仕組みとなっています。
ただし、高い性能にするためにはコストも同様にかかるため、優先順位をつけて検討することが必要になります。まずはご自身の住まいにどんな性能が必要なのか、以下の10の項目を検討し、住宅性能表示制度を利用するかどうか検討しましょう。
住まいの性能を10の分野で評価
1.地震などに対する強さ(構造の安定)
地震や台風などの風、または大雪などに対して、住宅がどれだけ倒壊・損傷しないで耐えられるかを評価します。
2.火災に対する安全性(火災時の安全)
火災発生をすばやく感知し、安全に避難できることと、外壁や床、屋根に火の延焼を食い止める耐火性能を持たせること、火災警報器や感知器の設置等の対策を評価します。
3.劣化の軽減性(柱や土台などの耐久性)
定期的に適切なメンテナンスをしていることを前提として、年月の経過による構造躯体の傷みに対する性能を評価します。木造の場合は主に土台や柱が腐らないようにするための対策等級が高いほど、柱や土台などの耐久性が高いことを意味します。
4.維持管理・更新への配慮性(配管のメンテナンスへの配慮)
水道管やガス管、排水管といった配管類は一般に構造躯体の修繕などを実施するよりも早く取り替える必要があります。とくに配管は15~20年ごとに全面交換が必要となるため、配管の点検や清掃のしやすさ、万一故障した場合の補修のしやすさなどをこの項目で評価します。
5.温熱環境性(省エネルギー対策)
室内を快適な温度に保ちながらも、冷暖房にかかるエネルギーの削減のために設けられた項目で、住まいの断熱性、気密性を高めるための設備や仕様が採用されているかを評価します。
6.空気環境性(シックハウス対策・換気)
家具や建具から発散されるホルムアルデヒド等の有害化学物質が引き起こす健康被害「シックハウス症候群」。防止策としてホルムアルデヒド放散量の少ない材料を選ぶこと、室内の空気を常時入れ替え、屋外に排出するために、どのような換気設備が整えられているかについても評価します。
7.光と視環境(採光性能)
生活上のさまざまな作業に必要な明るさ。照明器具で光を得るのと同時に、窓からの自然の光(採光)について、東西南北と上方の5方向で、窓がどのくらいの大きさで設けられているのかを評価します。
8.音環境(遮音対策)
大きな幹線道路に面している土地などは、交通騒音を遮断するには、建物の気密性を高めることが重要になります。遮音性の高いサッシまた、主に共同住宅の場合ですがで、上の住戸からの音や下の住戸への音、隣の住戸への音などについても対策が必要になり、床の仕上げなどを工夫して対処します。
9.高齢者への配慮(バリアフリー対策)
高齢者や障害者が暮らしやすいよう、また加齢に伴い身体能力が低下しても、安全に生活できるようにするための性能です。床や出入り口は極力段差をなくし、階段は勾配をゆるく、手すりを設置して踏面の幅を広く設けるなど、家の中での移動時の安全性や介護のしやすさがポイントとなります。
10.防犯対策
玄関ドアや錠、サッシやガラス、雨戸、シャッターなど、屋外から侵入可能な開口部に、侵入防止策として有効な措置がとられているかどうかについて評価します。また、侵入者が好む死角をつくらないために、道路や隣家からある程度見通しのきく外構にすることも有効です。
性能をより確かなものにするための仕組み
建設住宅性能評価を受けると、万が一のトラブル時でも「指定住宅紛争処理機関」が迅速・公正に対応してくれるので安心です。また民間金融機関や公共団体の住宅ローン優遇や、地震に対する強さの程度に応じた地震保険料の割引などがあるエリアなどもあります。詳細は国土交通省のウェブサイトで確認を。 性能については、やはりプロに相談することが一番です。この項目だけは高くしたい、などおおまかな要望が決まったら、建築家や設計担当に伝えることをお忘れなく。