注文住宅の最大の魅力は、デザインや間取りなどの「自由度の高さ」と、建て売り住宅にはない「個性」にあります。それらを支えるのが、建築家の「アイデアの引き出し」。コストや敷地条件、法律上の制約を守りながらも自由で個性豊かな家づくりを実現するには、多くの引き出しを持つ建築家の力が不可欠です。もしかすると、「引き出し」の中身を覗くことが、理想の建築家に巡り会う一番の近道かもしれません。そこで本シリーズでは、建築家のそんな「アイデアの引き出し」より「おすすめの部材」を毎回ピックアップ。vol.1では無垢の床材(無垢)についてを調査しました。その内容をご紹介します。
アンケート!建築家が選ぶ人気の無垢材
- 【Q1】好きな無垢材、その理由は?
- 【Q2】無垢材への想いやこだわりは?
- 【Q3】ケア方法、デメリットなど
樹種によって、色合いや木目・使い勝手が大きく異なる無垢フローリング。それだけに、床材選びに頭を悩ませる人も多いようです。そこで今回は、建築家オウチーノに加盟の建築家にアンケートを実施し、建築のプロが選ぶ人気の床材をリサーチしました。
最も人気が高かったのは、ナラ材(オーク)。木目の美しさ、強度、重厚感、そして価格など、すべてのバランスを備えたナラ材は、無垢フローリングの王道として多くの建築家から支持されているようです。
一方、針葉樹系では、柔らかく、歩行時の衝撃を吸収してくれるスギがダントツの人気。肌触りの良さやコストを重視する建築主にはうってつけの床材です。そのほか、桜やチーク、パインなどのも上位にランクイン。建築家の多くが、予算や家族構成、インテリアなどを考慮して、適材適所で床材を選んでいることが伺えます。
以下、アンケートにご協力いただいた建築家の生の声をダイジェストでお届けいたします。
厚み3cm、幅22cmのスギの床板がおすすめです
- 【A1】
- コストは他の材料を使っていませんのでそれらと比べて高い安いはわからないですが、厚み3cm、巾22cmのスギの床板という条件の中では、安価にお施主様にご提供できていると思います。
スギは柔らかい木材ですので傷つきやすいですが、足あたりも良く、冬はほんのり暖かく、夏はさらさらでとても気持ちのよい材料です。傷やへこみも年月と共に味わいになって行きます。また、ある程度のへこみや傷は簡単に補修可能です。
- 【A2】
- 床板だけでなく構造材、下地材などもすべて国産材にこだわっています。その理由としては 日本の林業に貢献する事が環境保護、エコにも繋がる事、何より住む人の健康と心地よさを考えると一番安心しておすすめできる素材だと考えているからです。
- 【A3】
- 特別な手入れ等は不要かと思います。
(住まう方の好みにもよるところがあります)
湿度に影響を受けますので 冬は隙間が空きがち、夏場はその隙間が小さくなったりして動く場合もありますが、Bois設計室で使用している床板は製材と乾燥方法の技術により「割れ」「反り」等の不具合は今までにありません。
私自身も築9年のスギの無垢材の床の家に住んでいますが、隙間や傷は気にならず、それよりも以前住んでいたマンションの新建材のフローリングに比べて夏場や冬場の快適さが大きいのでとても満足しています。普段は掃除機やクイックルでのお掃除で時々気が向いた時にAUROのお手入れ用ワックスを使って水拭きしています。
厚み3cmの、日本産の栂の板目は表情が多彩でとても魅力的
- 【A1】
- 植林のできない日本産の栂は大変珍しく、自然生の400年位の材を加工したものです。香りはあまりありませんが、板目の表情が多彩で美しく、見本をお見せすると、お施主さんが離れられなくなってしまう魅力的な板材です。
- 【A2】
- 壁や天井に直接触れることは少ないですが、床は四六時中触れている部位になるので、床材に合板や塩ビ素材を使うことはあり得ないですね。柔らかいこと、調湿能力で部屋の空気もサラッとさせてくれること、長寿命であること、傷ついても補修がきくことなど、他に変えがたい魅力がたくさんあります。
- 【A3】
- やはり一番のネックは伸び縮みをするということ。とくに床暖房のを設置した場合は「まだましな」木を選んでも、いくらかは「隙」や「反り」が少しは出てしまうことかと思います。
ローコストなら、チェリーなどのB級品がおすすめ
- 【A1】
- ローコスト、賃貸(収益物件)を扱う場合は、チェリーなどのB級品(フィンガージョイントだったり目が揃っていなかったり)を使います。金額で言えば坪8000円程度のもの。昔は賃貸に無垢なんてあり得ないといわれましたが、むしろ原状回復の際に張り替えているオーナーも多いので、補修や研磨で済む無垢はむしろ良品。塩ビの張替はその建物の価値を下げるので、賃貸などの場合は使用しないようにしています。ハイコストの際は、部掛かりが多くなっても1.5倍以上の材料を取って、かなり現場で吟味して目の良いものだけを選びます。それだけのこだわりは無垢を扱う場合必要だと思います。
- 【A2】
- 絶対にテカテカワックスは塗りません。自然オイルにします。そして貼りの方向はロスの出ない美しい張り方を心がけます。家のデザインテイストと木の目のテイストを吟味しています。それからパイン材は使いません。
- 【A3】
- 床暖房以外ほとんどありません。逆に無垢の温かみがあれば床暖房は必要ないと思っています。
冬場の冷たさをやわらげてくれるスギの無垢の温かみ
- 【A1】
- スギは柔らかい素材のため素足で過ごしても疲れにくく、冬場の冷たさを感じにくい。また厚さ30mmのため床の強度を上げやすい。傷付きやすい欠点はありますが、ある程度の段階で表面を削り落とすことで元の表情に戻せる利点があります。
- 【A2】
- 基本的に素足で過ごしていただきたいと思っているため、なるべく柔らかい素材をおすすめしています。その理由は家事で長時間立ちっぱなしの足の疲れを軽減したり、冬場の足下か来る冷えを防ぐことなど、床材のみの機能で賄えるからです。
- 【A3】
- 柔らかい素材のため傷が入りやすく、置き家具やいす等の足下は傷が残りやすい。乾燥収縮で継ぎ目が開いてくる可能性がある。節等が多い。節の多い表情が嫌いな場合はスギ間伐材の集成フローリングをおすすめしています。
- 【事務所所在地】
- 千葉県
- 【対応エリア】
- 関東
- 東海
- 関西
- 九州
- 【好きな無垢の床材】
- オーク(ナラ)、メイプル、ビーチ、チーク、桜、スギ、パイン、栗、カラ松
- 【よく使うメーカー】
- 伊勢通
経年変化を楽しめ、傷も味になる無垢材の魅力
- 【A2】
- 無垢のフローリングは足触り、意匠、空間の質にしても、合板フローリングとはまるで違います。経年変化を楽しめる、傷も味になる、というのも魅力的です。また床は壁、天井ほど気軽に仕上げを変える事が出来ない事が多いのでこだわった方が良いと思います。予算的にも手の出せる樹種は案外多いです。
塗装は自然塗料系のワックスで、ツヤの少ないもの、クリア色を採用する事が多いです。着色はおすすめしていません。キッチン等の水かかりのあるところのみ、ウレタンクリアのつや消しにする場合もあります。
- 【A3】
- 合板フローリングに比べると多少の反りはあります。針葉樹系等の柔らかい素材だと傷がつきやすい、シミがつきやすい、というのはあります。
ラフ感で節を出したい時は、スギ、パイン、落ち着いたイメージでは、タモ、ウォルナット
- 【A1】
- 価格とその内装のイメージで決定します。少し、ラフ感で節を出したい時は、スギ、パインなど。落ち着いたイメージでは、タモ、ウォルナットなど使いわけます。
- 【A2】
- 塗装については、ツヤの少ないものを使用します。ツヤがあるとどうしても、既製品と見た目が変わらなくなってくるので。あとは、フローリングの含水率。極力、小さいものを選びます。反り等が少なくなるので。
- 【A3】
- 醤油等のシミが染み込みやすいこと、反り等で隙間が生じることです。特にスギは柔らかいので傷がつきやすいと思います。
傷、シミは、経年変化を楽しんでいただけるひとつの要素だと思っています。
- 【事務所所在地】
- 関東
- 【対応エリア】
- 関東
- 東海
- 関西
- 九州
- 【好きな無垢の床材】
- 桜、スギ、ヒノキ、栗、ヒバ
- 【よく使うメーカー】
- 基本メーカー品は使いません。日本の製材所で加工されたものが多いです
国産材で健康を害さない素材として信頼の出来るものを薦めたい
- 【A1】
- 国産材で健康を害さない素材として信頼の出来るものを薦めたい。スギはリビング・寝室でローコストのとき、ヒバ・ヒノキはキッチンなど水廻りに仕様するか、ミドルコストのとき。
広葉樹は床暖房をするときやハイコストになっても節が嫌な方の時などと変えています。
- 【A2】
- 基本的に国産材を仕様。無塗装品でないと無垢の良さが半減すると思います。
適材適所で使用することが重要で、メーカーの売り文句にはあまり興味がありません。節が嫌な方の時などと変えています。
- 【A3】
- 当然の如く気温湿度で動くため、隙間や割れを生ずることがある。
スギなど柔らかい材料は傷がつきやすいし、水分を吸収する。
- 【事務所所在地】
- 大阪府
- 【対応エリア】
- 関東
- 東海
- 関西
- 九州
- 【好きな無垢の床材】
- オーク(ナラ)、メイプル、チーク、ウォルナット、アメリカンブラックチェリー、パイン、タモ
- 【よく使うメーカー】
- ワールドフロンティア、高正
質感、足触りや色、インテリアのカラーで選びます
- 【A3】
- 自邸もパインの床材を使っていますので、お手入れについては、1年に1回、大掃除等の時期に、ワックスをしましょうという案内をしています。私自身がおすすめしているものは、オスモワックス、リボスなどの自然素材のものです。
地産地消をモットーに、地元で育つ木を地元で使用
- 【A1】
- 地産地消をモットーに、地元で育つ木を地元で使用しています。木は生きているので割れや収縮は調湿のため、表面が傷つきやすいのは細胞間に空隙が多く、表面が暖かいため、というようにデメリットもひとつの特徴としてとらえるとうまく無垢と付き合っていけるのではないでしょうか。
- 【事務所所在地】
- 福岡県
- 【対応エリア】
- 関東
- 東海
- 関西
- 九州
- 【好きな無垢の床材】
- スギ、オーク(ナラ)、桜
- 【よく使うメーカー】
- 大利木材、ニッシンイクス、GAIN
介護のための空間には不向きかもしれません
- 【A1】
- 無垢の中でローコスト。素材の品質が良いなどがその理由です。
- 【A2】
- まずは、木であること。直接、肌理(きめ)が感じられること。など
- 【A3】
- 基本的に、変形しますし、汚れもついてきます。それをどう考えるかですね。集合住宅ですと遮音性が求めれらますので無垢材が使えないところもあります。また、介護のための空間の場合、耐水性、耐摩耗性、掃除のしやすさなど求められるところは利用しないほうがよいでしょう。
ローコストならパイン材がおすすめです
- 【A1】
- ローコストならば、パイン材、ミドルコスト以降ならインテリアに合わせて広葉樹で提案しています。無垢材は傷がついても「味」になっていくと考えています。
- 【A2】
- 木の質感を大切にしたいので無塗装でオイルを塗るだけにしています。ウレタン塗装などはNGです。
- 【A3】
- 床暖房による伸縮、目の開、傷がいきやすいものもあるので、プロの目でしっかり見極めることが必要です。
西川材がおすすめです
スギはローコスト・長尺なので、加工が自由にでき、意匠が統一できる点がよいと思います。製材所から直接仕入れています。住む人が気持ちよく住めるよう、触れた感触がよいとか、見た目が気持ちがいいものを選ぶようにしています。
ロットによる色味の違いや気候変化など、お施主様に十分な説明を行います
- 【A2】
- 木材資源の少ない今日、単板にこだわるのではなく、積層・集成フローリングの活かし方を考えることが重要と考えています。
- 【A3】
- 無垢フローリングはロットによる色味の違い、1年の気候変化に伴う反りや伸縮が必ず起こるため、採用時には建主様に十分な説明を行っています。また汚れ防止の面ではウレタン等塗膜をつくる塗料でコーティングすることが有効ですが、将来的に着色する場合にその塗膜が障害となり塗料が含浸しません。従って竣工時は無塗装またはオイルフィニッシュ程度にとどめ、1年に1回程度のワックスがけを行った上、汚れが目に余るようになった時点で濃い色味に着色することをおすすめしています。そうすればひとつの木材で2種類の空間を楽しむことができます。
外国で製材されたモノは注意が必要な場合も
靴をはいて暮らすのにはナラなどの広葉樹が良いと思いますが、裸足で暮らす私たち日本人には針葉樹の床が優しい気がします。外国で製材されたものは、木裏のモノが稀にまじっていることがあるため、キャスターを転がすと逆目がたつので気を付けたほうがよいでしょう。
木の素性を隠さないよう仕上げはオイルかワックスで
仕上げにはオイルやワックスなどを用い、木の素性を隠さないようにしています。オイル仕上げとした場合には定期的なメンテナンスが必要。季節による伸縮があるため、隙間が生じる事があります。
お手入れには天然油がおすすめです。
コストや色合い、強度でオークや桜をおすすめしています。お手入れについてですが、天然油(匠の塗油等)はおすすめです。残念ながら無垢は床暖房には不適です。
無垢の持つ存在感
材料費は高くなりますが、使い方によって、工事手間が省けたりと、トータルで考えれば決して高くなく、構造的にも、強く、素足にやさしく、無垢のもつ、存在感があるのも魅力だと思います。特にデメリットはないと思いますが、無垢材との付き合い方は必要になると思います。
日本人にはやはりスギが向いているように思う
ローコストであり、色合いや足触りの柔らかさ、ぬくもりのある感触は素足で歩く傾向のある日本人には「スギ」が向いているのではないかと思います。反り、縮み、われなどが稀にありますが、それをお施主様にご理解していただいた上で採用しています。
色合い、表面強度は大切です
色合いや表面強度から選びます。複合フローリングの場合は、表面材が薄いため、傷になると目立ちやすいこともあります。