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建築家おすすめ 部材シリーズ

Vol.2 壁&天井材の使いわけで空間を自在に演出!

注文住宅の最大の魅力は、デザインや間取りなどの「自由度の高さ」と、建て売り住宅にはない「個性」にあります。それらを支えるのが、建築家の「アイデアの引き出し」。コストや敷地条件、法律上の制約を守りながらも自由で個性豊かな家づくりを実現するには、多くの引き出しを持つ建築家の力が不可欠です。もしかすると、「引き出し」の中身を覗くことが、理想の建築家に巡り会う一番の近道かもしれません。そこで本シリーズでは、建築家のそんな「アイデアの引き出し」より「おすすめの部材」をピックアップ。vol.2では壁&天井材についてご紹介します。

  • まずは特性を知ろう 壁材・天井材の種類と演出効果
  • 壁・天井材の「適材適所」はコレ! 部屋別に考える壁材の選び方

壁&天井材で、印象はガラリと変わる!

小島広行 Fortune-House

内装の仕上げには自然素材の木と珪藻土をつかった建築家・小島広行さんの作品事例「Fortune-House」

床とならび、空間面積の多くを占める室内の壁・天井。そのため、壁や天井の素材次第で、空間の持つ印象はガラっと変わります。どのような材料をどこに使うかを決めるのは難しいものですが、同時に建築家のウデの見せ所の1つでもあります。そこで以降では、住宅に使われる主な壁&天井材についてご紹介しましょう。最近では研究開発が進み、材料の種類も豊富になっていますが、大きな分類は「クロス」「塗装」「左官」「板張り」の4種類。通常、壁と天井は同じ仕上げにする場合がほとんどですが、デザインの意図によってはこれらを使い分けるケースもあります。

クロス・・・壁・天井材ではポピュラー。人気の秘密はコスパとメンテナンス性

竹内国美・由美子 ウッドチップ壁紙

建築家・竹内国美・由美子さんがおすすめするオガファーザー、ルナファーザーは、再生紙とウッドチップが原料。ビニールクロスと違い、通気性・吸湿性があり、結露やカビの発生も抑える呼吸する壁紙。

壁・天井材の代表格といえば、やはりクロス。賃貸マンションやアパートなどの壁・天井もほとんどがクロス仕上げなので、多くの人にとって最もなじみの深い素材でしょう。メンテナンス性が高いほか、大量生産が可能なためコスト面で抜群の優位性を持つ、という点が主な人気の理由です。
以前は、クロスというと単調で安っぽいイメージを持つ人も少なくありませんでしたが、最近のクロスのテクスチャや色のバリエーションの豊富さには目を見張るものがあります。通常のプリントもののほか、左官仕上げや塗装仕上げの質感を忠実に再現したもの、また、土壁のような質感のものまで、表情は実にさまざま。ぱっと見ただけではクロスだと分からないようなものもたくさんあり、建築家からも重宝されています。ビニールクロスの他にも、レーヨンや麻などでつくられる「織物クロス」や、和室などに使われる「紙クロス」といった種類があり、さまざまなデザインに対応してくれます。

塗装・・・マットな質感が魅力。数豊富で多彩な表情を演出できる

ローラーや刷毛などを使って塗る「塗装」。かつては、ペンキという呼称が一般的で、その独特の臭気から外装材として使われることがほとんどでした。しかし最近では、水性塗料など人体に有害な物質を含まない塗料が広く普及し、内装材として人気を集めています。塗装の最大の特徴は、色数・バリエーションの多さ、そして、クロスにはない、独特のマットな質感が得られる点。クロスのように表面にテクスチャや継ぎ目がないので、クールな印象もつくりやすくなります。また、刷毛やローラーなど、扱いやすい道具で塗ることができるため、建て主によるセルフDIYにも適しています。

ポーターズペイント

建築家・東信洋さんがおすすめする、オーストラリアから輸入されたペイント「ポーターズペイント」。水性で体に悪い有機溶剤などが入っていないので、お子さんと一緒に塗ることができ、重ね塗りもできる。写真左・中央はポーターズペイントのお施主様が参加した体験会の様子。右はその事例「KAMIMARUKO」。ともに写真は東信洋さん撮影。

左官・・・漆喰に代表される左官仕上げ。高級感が一気にアップ

北野彰作 南大阪の家2

建築家・北野彰作さんの作品事例「南大阪の家2」。リビングダイニングの一面の壁のみを調湿効果に優れたシラス壁(薩摩中霧島壁)にした。

壁・天井材の中でも高級な仕上げ材の1つが「左官仕上げ」です。他の材料に比べ、施工期間やコストは増えるものの、熟練の職人がコテを使って丁寧に仕上げていくので、世界にひとつしかない、個性的な壁が手に入る点は魅力です。塗装のように表面に凹凸のない均一な面に仕上げることもできますが、あえてコテのムラを残すことで、塗装にはない柔らかな空間にもできるのも左官のメリット。
左官に使われる材料にはいくつかの種類があり、それぞれ特徴が異なります。たとえば「漆喰(しっくい)」は古くから使われている左官材で、天然素材のため環境に優しく、調湿効果も期待できる材料として知られています。また「プラスター系」の左官材は、漆喰のような質感を持ちながら、ひび割れなどが少なく、美しく仕上がる点が特徴。そのほか「アクリル系」の左官材は、扱いやすく耐久性が高いため、人気を集めています。左官による仕上げは手間やコストが掛かるため、「壁は左官、天井は塗装仕上げ」のように、部位や面によって使い分けるケースも多くなっています。

板張り・・・室内のアクセントに

仕上げ材だけじゃない!
名脇役「幅木」と「回り縁」

床・壁・天井材にはさまざまな種類がありますが、それぞれの面で使う素材が異なる場合、素材と素材が切り替わる箇所にはちょっとした工夫が必要。たとえば床がフローリングで壁がクロスの場合、フローリングとクロスがぶつかる部分(取り合い部といいます)はきれいに見せるのが難しく、そのままでは取り合い部からクロスがはがれてしまいます。壁と天井の場合も同様です。
そこで必要になるのが「見切材」です。素材の切り替わる部分に木材や樹脂などの見切材を取り付け、異素材の境界をきれいに見せます。床と壁がぶつかる場所に使われる見切材は「幅木(はばき)」、天井と壁の場合は「回り縁(まわりぶち)」と呼ばれ、室内のデザイン性に大きな影響を与えています。見切材にこだわる建築家も多いので、仕上げ材だけでなく、幅木や回り縁についても、建築家と相談してみてはいかがでしょうか。

自然素材にこだわりたい人には、「板張り」もおすすめです。豊富な樹種から選ぶことができ、経年による変化を感じながら暮らせる点は魅力でしょう。床のフローリングとテイストを合わせたり、逆にあえて異なる色にしたりと、好みによって選択の幅も広がります。
ただし、壁や天井全面を板張りにするケースはあまり多くはありません。たとえば壁の腰部分までを板張りにして、その上を塗装やクロスなどで仕上げたり、壁はクロス、天井のみ板張りとし、バランスを取ります。また、リビングの壁のうち1面だけを板張りにしたり、あえて色や種類の異なる板を張ってランダムな面をつくり、アクセントにする、などの方法もあります。

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