建築家・ナイトウタカシさんのブログ「経年で風合いが変化する素材を使うには?」

経年で風合いが変化する素材を使うには?

2022/04/29 更新

とある家の玄関周りです。



モノトーンで統一されたシックな空間。

その中でひときわ目を引く、ムラのある壁。



Solidといいます。

セメントの素材をそのまま生かしていて、

このムラは、着色ではなくて、自然な風合いなんです。



住宅はもちろんですが、カフェ等の外壁で

よく採用している事例が見られます。



ただ。

今回、こちらの家で採用していただいて思ったことは。。



カッコいいからといって、前面に使えばいい

ということでもないなと。



こちらの家では、玄関ポーチの一側面の壁だけに採用。

アクセントのような使い方。



しかも、周りを、かなり抑えた色合いや素材にしているので、

その表情が、より引き立っていました。



もう一つは。

スケール感。



一枚一枚の大きさは、規格があります。



外壁全面に採用すると、少しうるさい感じです。

ミニマルなデザインを目指すのであれば、

そのラインが気になるんだと思います。



こちらの家のように、限られた範囲での採用で、

視線に、より近い場所なので、程よいバランスだと思いました。



それと、もう一つだけ。

この素材は、素材そのままなので、経年で変化していきます。

なにかで、コーティングしてあるわけでもないですので。



その風合いの変化を愉しめる感性がないと難しそうです。



仮に、雨と強い日差しが当たる場所で採用すると、

その変化は、おそらくすごいことになると想像できます。



下手すると、反ってしまったりする可能性も。



こちらの家では、軒下で、雨がかかりにくく、

しかも、強い日差しが当たりにくいので、

経年での変化は、緩やかで、安定していきそうです。



こういった素材を採用する場合、

見た目だけでなく、いろんなことも考えながら、

バランスよく採用していけるといいと思いますよ。





そうそう。

こちらの家。



昨日、お客様の検査の手直し工事の最終確認が完了。

午後には引越しでした。



今晩から、この家で、新しい暮らしが始まります。



嬉しいような、寂しいような。

毎度ですが、不思議な感覚です。



ほんと、お客様の感性が隅々まで行き届いた、

素晴らしい家に仕上がって、よかったです。





そんな家づくりに関わらせていただいて、感謝です。

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