建築家・相川直子+佐藤勤さんのブログ「設計事務所って何? その2」
設計事務所って何? その2
2021/12/28 更新
コラム:はじめての家づくり 44|
設計事務所って何? その2
こんにちは。
シンプルモダン住宅を提案する相川佐藤建築設計事務所です。
丁寧な打合せで、みなさんの夢を叶えます。
千葉県柏市・松戸市の建築家として家づくり設計活動中です。
リフォーム・リノベーションの設計依頼もお待ちしています。
最近は、住まいの熱環境を研究中。
快適な住まいづくりを目指しています。
○
前回の続き。
アトリエ事務所というのは、なかなか厳しい世界で、
やせ我慢ゲームの体(てい)だというお話でした。
そのためか、ハウスメーカーさんの住宅とも工務店さんの住宅とも違うものが出来上がってきます。
建主さんはどこに住まいづくりを依頼したとしても、おそらく、完成した住まいは、建主さんの「らしさ」が現れます。
そして、そこには、その住まいを設計させてもらった、私たち設計事務所の「らしさ」も現れます。
街を歩いていて、そこにある住まいに同業者が設計しているかもしれないと感じることがあります。
建材の使いかたやデザインの処理の仕方など、手が込んでいたり、攻めていたりするのでそう思うのだと思います。
「らしさ」のひとつの形です。
何れにしても、アトリエ系設計事務所の多くは個人名あるいは個人的な(イデオロギーを示す)事務所名を掲げています。
「ワタクシ」を掲げていますので、しっかりと人生を賭して活動をしています。
逃げも隠れもせずに、声をあげての設計活動です。
その結果として、作られる住宅には私たちの真剣さが現れているはずです。
建主さんのあらゆることに当事者意識をもち、考え提案していくのがアトリエ系設計事務所の本質です。
じゃあ、どの事務所を選べばいい?
ところで、設計事務所を家づくりのパートナーとしてチョイスする場合には何に注意したらよいでしょう。
具体的にどういう事務所をどのようにチョイスすべきか?
あまた住宅を設計する建築設計事務所があり、甲乙つけがたいと思います。
どの設計事務所もホームページを見ると、これまでの実績が掲載されています。
プロのカメラマンの写真が、雑誌のようにレイアウトされていたりします。
家族構成や面積、工事費や敷地条件など具体的な情報があると、かなり参考になる気がします。
それでも、なかなか実物を体験するように建物全体を理解するのは難しいと思います。
色々なホームページで、ちょっとずつお気に入りとなる写真は見つけられるでしょうが……。
さらには、そこで見ることができる住宅の情報は建主さんの希望が色濃く出ているものかもしれません。
カントリー調やファンシー調のインテリアイメージは、その可能性が大いにあります。
そうなると、インテリアの感じや外観のイメージは、必ずしも設計事務所の実力・実績を表してはいないかもしれません。
ですから、写真だけではなく、コンセプトやマニュフェストなど、どうゆう活動を心がけているかという情報ページもみてください。
また、経歴情報も役に立つとは限りません。
どこで修行したかで、得手不得手があるかもしれないという話をしましたが、キャリアも様々で、本当はそこで何をしていたのか(どんな設計を担当していたのか)わかりません。
見習いで電話番だけしていたなんてことも十分あります。
ちょっとした住宅でもスタートから関わると引き渡しまでには1年以上かかるものです。
あるいは事務所での活動に違和感を感じ、移ることもあります。
本格和風の事務所で修行しようと思ったのだが、本格和風というのがそもそも違った……って感じのことがあるかもしれません。
キャリアを参考にも慎重に。
アトリエ系には個人事務所でなく、個人名でも組織として設計対応する事務所もありますし、個人名の事務所でもボスはなかなか出てこず、担当者としてスタッフが対応するケースもあるようです。
また、住宅に熱心に取り組んでいる事務所がありますが、事業規模が小さいことが多いので、風評があてにならないことも多いです。
治験者の少ない薬でビデンスを問うようなものです。
大切なのは相性とか信頼関係が最後まで築けるか、ということでしょうか。
各事務所のやり方や考え方なども眺めてみてください。
その事務所がどんな事務所なのかを想像して。
例えば、僕たちは、住まいづくりをするにあたって、未来のこと、これからのことも色々と思います。
住まいづくりは、未来に対する準備することだと思っていますから。
具体的に思っていることが色々とあります。
例えば、現状で、個人的に興味を持ち続けていることが二つあります。
一つは、耐震性能で、もう一つは熱環境です。
未来に対する準備の住宅
建築に携わるようになったからずっと、耐震性能については考えてきました。
建築を始めて間もない1995年の阪神淡路大震災は衝撃でした。
半年ほどした秋口に、友人を頼り実際に関西を訪れました。
テレビの画面で見る以上の災害の残酷さに、とにかく無力感と絶望を感じましたし、本当に何が起こったらこんなことになるのかと思いました。
しかし、その後、2011年には東日本大震災が発生しました。
ちょうど、事務所移転をした翌日でした。
カタログや雑誌のぎっしりと入った本棚が大きく位置を変えていました。
最近では熊本地震で想定外の事態が発生しました。
地震被害は日常を超えています。
それでも怯えるだけでなく、できる準備があるのではないかと思っています。
一つにはSE構法(NCN社)のような補償も含めた構造システムの導入でしょうか。
他にも在来木造に制振のダンパーなどを取り入れていく方法もあります。
どちらも最近では実績が増え、価格もこなれてきました。
建主さんの理解があってですが、うちの事務所でも耐震ユニットのご案内をさせていただき、導入いただくケースが出てきています。
予算的に厳しいことも多いですが、巨大地震発生時の保険として一度は検討することをお勧めしています。
もう一つの熱環境は、昨年の省エネ基準の義務化の流れもあり、景色が一変しました。
かつて日本の住まいは欧米の住まいと比べてエネルギー消費量が随分と小さかったようです。
欧米が全室連続暖房なのに対して、日本はこたつや火鉢といった局所暖房だったことによります。
しかし、高気密高断熱住宅に向かって様々アクションが起きています。
とはいえ、数字に基づく快適性でだけではなく、コスト感覚や社会全体のエネルギー消費に対する感覚のある熱環境にする時期に来ています。
僕らは、過剰に暖かくも涼しくなく、その人らしい居心地の良さを保てる熱環境を実現する努力をしています。
プランニングから、コストから、耐久性から、耐震性から、そして何よりそこで暮らすことから、居心地の良さを感じられるような住まいづくりを目指しています。
いずれにしてもこれまでと同じく、時間をかけ、ひとつひとつのことに丁寧に取り組み、可能性を追求するという設計姿勢に変わりはありません。
僕らの「らしさ」も大切にしたいと思っています。
(この項、了)
2021/12/28 佐藤 勤 記