建築家・相川直子+佐藤勤さんのブログ「図面の読み方 ⑦ 構造図」
図面の読み方 ⑦ 構造図
2021/11/01 更新
コラム:はじめての家づくり 40|
図面の読み方 ⑦ 構造図
こんにちは。
都市型狭小住宅の設計にもえる相川佐藤建築設計事務所の佐藤勤です。
丁寧な打合せで、みなさんの夢を叶えます。
台東区の建築家としても家づくり設計活動中です。
リフォーム・リノベーションの設計依頼をお待ちしています。
このブログでは、これから家づくりをなさる方たちに向けて、注文住宅の情報を提供するとともに、設計事務所に頼もうかどうかの検討材料を提供しています。
ご一読いただき参考にしていただけましたら幸いです。
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ここのところ6回にわたって住まいづくりの図面についてお話してきました。
デザインについて意匠図を中心にお話をしてきましたが、今回はそれ以外の建築図面のお話です。
建築図面も細分化
建築図面には、基本設計図、実施設計図、施工図など目的に応じて各種あります。
図面の目的は「図面使用者に要求事項を確実に伝達することにある」とされます。
前述したようにそもそも設計活動にも種類というかパート分けがあります。
大枠としての建築設計に対して、細分化された意匠設計、構造設計、設備設計(給排水、換気、電気等)、外構設計などがあります。
それらに合わせて、意匠図、構造図、設備図、外構図などがつくられます。
今回は構造のお話です。
構造図とは
構造設計は、意匠設計と並行し、建物の躯体(くたい)・構造体そのものを設計をする業務です(これには意匠設計とお案じで、現場監理業務もあります)。
構造の設計というのは、単に計算をして構造部材の大きさを決めることだけでなく、力の流れの考え方や力の集約・分散を整理していくことでもあります。
構造の考え方によって導かれた構造部材の内容によっても、大きな面積の建物や特殊な形式の建物などでは大きく工事費が違ってきます。
不思議な感じですが、同じような強度でも構造の考え方が違うと違ってきます。
建築というのは、分析・計算によって求められた現象を、部材を持った状況として提示するものです。
材料のこともありますが、施工のしやすさや施工精度の出しやすさも施工費=人工代を左右します。
木造などの場合、柱、梁、床などの構造部材の材種とサイズを決めます。
構造部材とは、建物の自体の重さである荷重や、そこで生活する人などの積載荷重などを支え、それらの力を支え、地面に伝える建築部材の事です。
これらの選定の過程や結果を示し、それに基づいて部材を用意し、施工するように指示しているのが構造図となります。
最近はPCのソフトが発達したため、ほとんどの構造設計で構造計算ソフトその中でも特に一貫ソフトを使っています。
これは、構造部材の検討、修正、計算、作図などを一貫して行うもので、いろいろな細部設定ができますが、ブラックボックスの部分も多いようです。
一昔前は、皆が計算尺や関数電卓を使って手計算をしていました。
これはモデル化された構造解析の数式によって計算されていたためで、今はその数式で計算できる人は極めて少ないようです。
「多分大丈夫だ」という勘、あるいは「危ないかも」という勘が働くのは、そうした手で考えることによってもたらされるものです。一貫ソフトでの計算では、そうスタ感覚を養うことはできないかと少し心配します。
私たちも現場で、なんともいえない違和感があったりすると、発見しづらいけれども大切な是正ポイントがあったりすることがあります。
ちょっといい加減な話ですが、勘は大切にしたいと思います。
一般的な建物ではそこまで必要とされることはありませんが、ちょっと踏み込むと一貫計算のソフトの限界となることもあり、結果、設計自体がソフトの限界に縛られるということもあるようです。
一方で、寺社仏閣などの建物のように構造計算をされていない建物を見ても分かる通り、規模や構造形式によっては経験知に基づいた物の安全性が保たれていると考えることもできます。
必要なのは計算ではなく、どういう安全な状態であるかです。
構造図もいくつかのパートに分かれており、主に床・梁伏図、軸組図、構造部材リスト、詳細図で構成されています。
表記や記号、図種は構造設計事務所によって色々とあるようです。
いずれにしても、構造設計の意図を正確かつスムーズに伝えるための工夫です。
① 床梁伏図(伏図)
構造図は、意匠図から仕上げ材や断熱材、調整部分などを除いた、力を伝える、あるいは力を支える構造部材だけを描いたものです。
通常は寸法が記されていますが、意匠図よりずっと記号化されていて、寸法やサイズがわかるだけでなく、取り付け方法や強さをしめす材質や仕様が表記されています。
各階の床を上から見下ろした平面的な図面が伏図(ふせず)の基本です。
描かれている床の下にある梁が、その階の床を支えているので、その梁は下階にあることになりますが、上階の伏図で表現されます。
また、ここには柱と土台を止める金物の位置と種類や、梁と柱をつなぐ方法や金物の種類、筋交(すじかい)の位置や耐力壁の位置も記載されます。
意匠設計は建主さんとの打ち合わせで修正や変更を行うことになりますが、随時あるいは逐次その変更に構造設計も対応する必要があったりします。
また逆に、構造的に修正が必要で、意匠を変更することもあります。
柱の位置や梁のサイズなど、大きく空間づくりに影響してきますので、注意が必要です。
② 軸図
伏図は、いわば意匠図で言うところの平面図です。
これに対して断面的な構造の図面を軸図(じくず)と言います。
構造体を垂直方向で輪切りにし、一方向から見たもので、断面的にどの高さのどの位置に部材があるかを示しています。
なので図に向かって伸びてくる部材は切り口となり、太線で表現されたりします。
基礎、土台、柱、梁、小屋、束、母屋など構造的架構が立体的に理解されます。
こうした図を元に構造材だけで作った模型を軸組模型といい、木造の住宅や鉄骨造のの建物では、設計の段階で作られることがあります。
③ 部材リスト
これは、床梁伏図や軸図に出てくる部材や基礎部分の情報をまとめたものです。
床梁伏図や軸図では、各部材が記号で表されています。
その内容を詳しく書き記してあるのでこのリストです。
通常は、これと対になる標準仕様書が図面一式としてセットにされます。
建材は生産、技術、流通、施工、コストなどの理屈などが積み重なってサイズや形状が決まっています。
なので、建材にはモジュールや定形があります。
構造材も数多種類がありますが、主な部材はしぼられます。
(この項つづく)
次回は設備図について
2021/11/01 佐藤 勤 記