建築家・相川直子+佐藤勤さんのブログ「はじめての家づくり 25|敷地の住み心地」

はじめての家づくり 25|敷地の住み心地

2021/07/10 更新

コラム:はじめての家づくり 25|
敷地の住み心地

こんにちは。
自然素材を使った住宅を一緒に考え設計する相川佐藤建築設計事務所の佐藤勤です。
常磐線沿いで家づくり設計活動中です。
今回もよろしくお願いします。

前回、前々回と土地購入のためのチェックポイントを見てきました。
ぜひ納得がいくまで、幾つでも土地を回ってください。
それでは、購入後敷地のさらなる分析をし、理想の家づくりを目指すお話です。

敷地の住み心地調査
今回からは、さらに踏み込んだお話をしていきましょう。
色々と検討してある種、納得のいった土地。
そういっても一つや二つは気になるところがあるでしょう。
プライオリティが違う選択肢に悩んだはずです。
そこでの住まいの住み心地は
日当たりや通風といった敷地内の状態と同時に
部屋からの眺めなど周辺環境に大きく影響されます。
環境を読み、環境を生かした設計が必要です。

敷地の周囲の家や道路の状況は、今後しばらくは変わらないでしょう。
もっとも人口減少傾向に入った日本では、
これからの政策が模索されている最中です。
想像もつかないドラスティックな変化が街を変えていくかもしれません。

ところで、周辺環境はどう家づくりに影響するのでしょう。
その第一歩、向こう三軒両隣が最も近い周辺環境です。
隣接する土地に建つ建物のサイズや高さ、建物までの距離、
窓の高さなどの確認が必要です。
居室同士が近すぎて息遣いまで聞こえるなんて状態は笑えません。
恋愛ドラマを見ているのにお隣のプロレスの音の方が大きいなんて堪りません。
エアコンの室外機やガス給湯器、キッチンの換気扇の位置なども
確認してください。
匂いや熱は思った以上に気になるものです。
また、エネファームなどは低周波音がでることもあるようで、
問題が指摘されています。
相手の構えに、家づくりをもってどう答えるかです。

他にも、公園や学校、鉄道や大きな道路も近隣の場合は注意が必要です。
公園や学校は思った以上に厄介です。
子供の通学を考えると、近いことは良いことです。
ですがそれにも関わらず、砂が飛んできたり騒音に悩まされたりします。
しかも、クレームはおいそれといえません。
また、鉄道や道路の騒音や振動は思った以上の距離を伝搬し、住み心地を脅かします。
特に朝晩のピーク時の交通量や電車ならば始発と終電の時刻は確認しておく必要があります。
振動が強い場合には、構造を変えたりします。
コストアップとなりますから、土地購入前に検討が必要ですね。
意外に盲点なのはその地域のごみ収集スペースです。
こちらのチェックもお忘れなく、住み心地に関わります。

日当たりと通風も検証すべし
日当たりや通風は住み心地の一つの指標です。
敷地の方角や接道の方角、周辺の建物の配置など、
様々な要因によって住環境は形成されていきます。
近年、ゲリラ豪雨や夏の暑さなどの環境問題が取りざたされますが、
土地のチョイスでは一般的に日当たりが大切とされます。
理想の家づくりをイメージする時、
みなさんの多くは、南向きや南庭が取れることが良いこととイメージします。
では、太陽光は実際にはどのように敷地に降り注ぐでしょうか?
朝晩は太陽の位置が地平線に近く、
大草原の一軒家でもない限り、建物に朝日はさしません。
ですから、太陽高度がある程度上がってからの日射が大切です。
それでも、朝から晩まで日光がさしこむような居室が快適かというとそうでもありません。
何事も適度が大切です。

ところで太陽はどのような角度で地面や壁にあたるのでしょうか。
小学校の理科で習っています。
太陽の高度は、経度と季節によって違ってきます。
一日の中で太陽高度がもっとも高い時の地面との角度である南中高度を調べてみましょう。

南中高度とは、以下のように求められます。
夏至 (90−緯度)+23.4
春分・秋分 (90−緯度)±0
冬至 (90−緯度)−23.4

例えば、東京都新宿区は北緯35°41′22″、東経139°41′30″です。
経度を35°とすると、夏至で78.4度、春分・秋分で55度、冬至で31.6度となります。

一年を通して敷地へどう太陽が指すのか、イメージをしておくことも大切です。
立て込んでいて一見日当たりの悪そうな土地でも、
思った以上に直射日光が指すこともあります。

家には北から入るか南から入るか?
陽の差し具合を検討して、敷地内での建物の配置を調整します。
しかし接道によっても、家の配置が違ってきます。
接する道路が南側の南入(みなみいり)の敷地と、
北側の北入(きたいり)の敷地は家の配置が違ってきます。
南入では、南側から陽のあたっている家にアプローチします。
北入では、日を背負った家へアプローチし、その先に明るい広がりが待っています。
東入や西入では、また感じが違ってきます。
西日に対しての配慮や通風に対する窓の配置も違ってきます。
これに敷地が縦長か横長かで、さらに配置にバリエーションが出ます。
敷地に立ち、自分の家の正面がどこを向いているのか意識してみてください。

向きは風の通り道にも影響します。
一般的には、
冬は北寄りの風で
夏は南寄りのよりの風です。
南北に風が抜けるように窓を配置するのが基本となります。
通年で考えると、夏の風向きを注意したいところです。
気象庁のホームページで詳しく調べることができます。

家づくりは風景づくり
キャッチコピーがつくほどではないですが、
街にはそれぞれ雰囲気というものがあります。
空が高かったり、緑が多かったり。
夕凪が強かったり、湿度が高かったり。
夜は暗かったり、看板が多かったり。
分析したことがないのでうまい言葉が見つかりませんが、
例えば、関東と関西は街の雰囲気が違います。
東海道でいうと浜松あたりから名古屋あたりに境界線があるように感じます。
何が違うのでしょうか。
今後も考えてみたいと思います。

しかし一方で、最近の住宅街はどこも同じような景色になってしまっています。
多少の差異が、誘導された思考や均一化された狭義の多様性を際立たせているように感じさせます。
本来ですと、場所場所で住まう人たちの個性が表現されているものです。
際立たせるつもりがなくとも、それぞれの「らしさ」が滲んでいます。
同じような景色が個性だと理解することには抵抗があります。

これは、デザイン、色、テイストなんて問題でもゴージャスさという問題でもありません。
どこで、どう生きたいかという問題なのだろうと思います。
家づくりできちんと考えたいことでもあります。
これについてはまたいずれ。

(この項続く)

2021/07/10 佐藤 勤 記

次回、7月13日(火)に更新予定です。

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