建築家・相川直子+佐藤勤さんのブログ「家づくりのための土地の読み取り方①」
家づくりのための土地の読み取り方①
2021/06/25 更新
コラム:はじめての家づくり その21
家づくりのための土地の読み取り方①
こんにちは。
自然素材を使った住宅を設計する相川佐藤建築設計事務所の佐藤勤です。
台東区で家づくり設計活動中です。
今回もよろしくお願いします。
前回はみなさんがどのような大きさの土地に
どのような大きさの家を建てたかをみてきました。
結果、家族構成の平均値が3.7人で、
敷地面積が247.4㎡、住宅面積が125.8㎡、
住宅面積の1.96倍が敷地面積でした。
それらがどのような家なのかは見えてきませんが、
ゆったりとした郊外の住まいのようです。
コラム続けます。
不動産基本情報の読み方
「3回建てなければ、云々」という口伝があります。
なかなか豪気な話に思えますが、家づくりのプロとしては思うところもあります。
それでもたった一度の人生最大の買物という方が多いと思います。
中でも「土地選び」は家づくりの基本。
今回はその基本情報について精査してみます。
インターネットやチラシなど様々情報がありますが、基本は同じです。
記載されている項目をひとつひとつみていきましょう。
記載情報の代表的なものとその意味
①セットバックと私道負担
住宅街などを歩いていると、同じ道沿いなのに、道路から凹んで建っている家や
道路にはみ出て建っている家があることに気づきます。
新しいそうな家が道路から凹んで建っている時、
それはセットバックしたからなのです。
新築にあたって、セットバックが必要で下がって建てたのです。
なんかそこだけ損しているように見えますが、そうでもありません。
セットバックとは、なんでしょう。
これから新たに家を計画している時
敷地の前面道路の幅員が4m未満の場合、
道路中心線から水平距離で2mの位置まで
敷地を後退させ建物を建設する必要があります。
これをセットバックといいます。
自身の所有地であっても、
そのセットバック部分は
建ぺい率や容積率を算定する際の
敷地の面積には含むことができません。
勿論、建物を建てることもできません。
道路は見た目ではわからないことがたくさんあります。
世の中の道路は都道府県や市町村が管理する公道ばかりではなく、
個人が所有し管理する私道があります。
公道に見えたものが、調べると実は私道であったり、
建物を建てるにあたって法律上、道路と認められなかったりすることもあります。
敷地面積の他に、私道の負担がある場合があります。
敷地の前面道路が袋小路の時など、
隣接する数軒で前面道路を所有している場合などがあります。
この場合、その道路を使用する近隣数件で分担する負担金が発生することがあります。
ですので、前面道路は長さや広さ、どういう扱いの道路かを確認する必要があります。
②道路の幅員
幅員(ふくいん)とは、敷地に接する道路の幅です。
道路の側溝・外溝から反対側までの距離です。
都市計画区域内の敷地には「接道義務」といって、
道路に正しく接していないと建物は建てられません。
幅が4m以上の道路に、2m以上接することが義務付けられています。
幅員が4m以下の場合は、前出のようにセットバックなど何らかの制限がある場合があります。
ですので僕らも現地調査をする時は巻尺やコンベックスを持っていきます。
情報の確認です。
みなさんも、土地の購入を検討している時、必ず現地はみてください。
そして、広告の情報を鵜呑みにするのではなく、一通り情報項目を確認してください。
現地で軽く計測しておくのも大切です。
ちなみに建築を勉強するために大学の建築学科に入ると、
入学してすぐにコンベックスを買うように指導されます。
その後、何かといっては計測しメモし、スケッチをし、身体的に記憶します。
これは後年、住宅設計の時に非常に役にたちます。
さらに、ちなむと
社会人になると、コンベックスを持ってこなかったため、
現地調達することが度々あり、コンベックスが引き出しの中でゴロゴロしています。
結構、設計事務所あるあるだと思います。
③地目
地目(ちもく)とは、不動産登記法に基づく土地の区分のことです。
土地の形状や利用状況を示すもので、
「宅地」「田」「畑」「山林」「原野」「墓地」などと23種類で表記されます。
住宅が建てられるのは通常「宅地」です。
その他の場合は転用が必要となり、その手続きが発生します。
ややこしいですが、そう表記されているだけで、「畑」が原野になっていたり、「田」が宅地風になっていることもままあります。
環境がいいのにお手頃な土地は、地目をチェックください。
というか、何度も書いて来ましたが、
お買い得な土地はまずありません。
お買い得には必ず理由があります。
しつこく確認してみてください。
通常より安価に土地が手に入るケースとして転用という方法がなくはないですが、
非常に手続きが煩雑で時間がかかります。
それにそもそも宅地でないわけですから、ほかにも色々と注意点があります。
④用途地域
「住居地域」とか「商業地域」など、皆さんもお聞きになってことがあると思います。
計画的な市街地を形成するために、用途に応じて13地域に区分されています。
第一種低層住居専用地域、第二種低層住居専用地域、
第一種中高層住居専用地域、第二種中高層住居専用地域、
第一種住居地域、第二種住居地域、準住居地域、田園住居地域、
近隣商業地域、商業地域、準工業地域、工業地域、工業専用地域
とややこしい。
その土地にはどのような用途の建物を建てることができるのかを
細かく制限しています。
よって、どの地域で家づくりをするかによって、
住環境や住み心地の違いが出ます。
賑やかな都市部なのか、穏やかな郊外なのか。
これも土地購入時のチェックポイントです。
用途地域の違いは建物の高さや面積としても現れます。
大きな道路沿いには大きな建物が建っていますが、
そこから少し入ると用途地域が変わって、大きな建物はないというように
地域の感じを大きく支配しています。
「住居系」「商業系」「工業系」の3つに大別されます。
さらに「住居系」は
8つに区分されています。
「住居系」地域では、住環境が優先され、
大きな工場や商業施設は建設できません。
の地域かにより、建てられる建物の高さや大きさが制限されます。
今回はここまで。
(この項、つづく)
2021/06/25 佐藤 勤 記
この項続きます
次回、6月29日(火)に更新予定です。