建築家・相川直子+佐藤勤さんのブログ「家づくりの最重要ポイント6選」
家づくりの最重要ポイント6選
2021/05/27 更新
ハウスメーカー、工務店そして設計事務所と家づくりの入口についてお話ししてきました。
続いて、どちらに頼むにしても
大切にしていただきたい家づくりの基本的な考え方についてお話ししたいと思います。
一度は考えていただきたい注意点を6つにまとめてみました。
1参加者全員との信頼関係を築く
家づくりは、膨大な検討事項を慎重に検討し、決定しないといけません。
どこにどう頼むか?
予算は、ローンは?
素材から色から型番まで。
選択肢は多寡、いずれにしてもすべてを自分一人でとはいかず、協力者が必要です。
建材ひとつ取っても、あまたあるものから、
ここに必要なものを一次的に絞り込む作業は素人の手に負えません。
判断を誰かに託さなくてはいけないことも 多々発生します。
工事内容も然り。
四六時中現場を監視できませんから
工務店が工事をちゃんとやっているか実際には確認できません。
契約に従って、真面目に施工をしてくれているはずですが、
心配しだすとキリがありません。
設計者の提案も同じです。
自分たちの希望に沿ったベストな提案をしてくれているはずです。
しかし、「もっといいものがあるかもしれない」と思った瞬間から
何かが変わりますよね。
そうした見えていない部分を埋めていくのは「信頼関係」です。
いい家づくりには、関係者との信頼関係が大切です。
家づくりの参加者全員を、まずは信頼してください。
工務店や設計事務所から見ても、信頼関係が前提になくてはお仕事が成立しません。
信頼されることで相手を信頼し、
その信頼に応える努力をしてくれるのではないでしょうか?
2 必要な時間をしっかりとる
ローンのプロセスや子供の就学のタイミングなどを考えると、
家づくりに使える時間は限られているように思えます。
「○○までに引越しを」というお話はよく伺います。
しかし家づくりは、愛する家族のためです。
「看護婦が聞いた看取った人たちの最後の言葉」という話があります。
多くの人が
「仕事を言い訳にするのではなく、家族との時間をもっと大切にすべきであった」
という趣旨の言葉を最後に残すそうです。
今際の際(いまわのきわ)でもないかぎり、大概の締め切りはなんとかなるものです。
家づくりにおいては、家族のために必要な時間を取ってください。
締め切りは締め切りのためではなく、良い家づくりのためにあるものです。
手段が目的になってはいませんか?
何かをきちんと考えるのには、
その準備の時間も必要ですし、そもそも考える時間がかかります。
しっかりとした検証をするには、
思考のためのインプットが必要ですし、分析には時間がかかります。
さらに、それらをしっかりとフィードバックするには、
全体に馴染ませる時間も必要です。
「締め切りを守ること」のために締め切りを守るのではなく、
良い家づくりをするために、その締め切りで良いのか慎重に対応するということです。
3 常に将来を見据えて
時間は刻一刻と過ぎていきます。
今は未来に繋がっています。
物事の決定をするときに、時間のベクトルイメージを持つ必要があります。
ライフステージごとの家族の変化や世間の変化に対応できないのでは困ります。
5年、10年、15年、20年、35年というスパンで具体的に家の寿命を考えましょう。
子供が巣立つのはいつか?
自分の両親はこれからどうなるのか?
自分たちの老後はどうするのか?
家のメンテナンスはどうなるのか?
後年に対応力を発揮する方法は、いくつかあります。
例えば、設計時にすべてを決めてしまわないこと。
余裕や余力をもたせ、一見無駄に見える状態にしておきます。
不測の事態への備えです。
その無駄や決められなかったちょっとしたことが後年効いてきます。
あまり近視眼的にならず、
少し先の未来も楽しむつもりで家づくりをすることをお勧めします。
ちょっと余裕があるのは、思った以上に豊かなことです。
4 性能だけではなく心地よさを探す
住宅において「性能」は大切です。
特に暑さ寒さ対応を性能としてきちっと保持することが求められます。
確かに極端に寒い時や極端に暑い時期をいかに過ごすかも大事です。
ただ、こと日本では、
過ごしやすいそれらの季節の間の快適な中間期への対応も大切だと思います。
例えば暖房機器にも冷房機器にも頼る必要のない中間期では、
屋内の通風をイメージしておく必要があります。
これは性能値では見えてこない快適さがあります。
「心地よい」という性能です。
心地よいと感じられるオンリーワンの場所を所有することが、家づくりの目的です。
常に住む人のことを考え、丁寧につくり込み、
シンプルで「居心地のよいデザイン」を目指す。
一方で、あまりの高性能住宅は本当に体に良いのかとも思います。
無菌状態のような環境で育つことは良いことでしょうか。
それは知らず知らずに心や体の免疫力を低下させていないでしょうか。
季節の変化や気温や湿度の変化に幸せを感じ、余裕のある時間を過ごしたいものです。
5 反省をしても後悔はしない
人の好みは変わっていきます。
そして、世の中も変わっていきます。
もちろん変わらないものもありますが、
10年前には想像できなかったことが、最近では容易に起こります。
おそらくこの10年後も想像を越えるでしょう。
パーフェクトな家づくりはないと思います。
理由は二つあります。
一つは、いろいろと検討していくことで、知識が増えていきます。
しかし、分かり始めたころに、家づくりは終わりを迎えます。
ですから、その時ベストだと思えたものが
後日、必ずしもそうではなかったということになります。
それに新製品が出たりするのですからなおさらです。
ベストを尽くしてもおそらく、そうなります。
ですから反省をしても後悔はすべきではありません。
後悔はうじうじするだけです。
反省後に前に進みましょう。
もう一つは、
家づくりは引き渡しされてから、建主さんが暮らしていくことで徐々に完成します。
どのように暮らしていくか?
どのように考えていくか?
どう手を入れていくか?
経年の先で初めて家づくりは完成形となります。
ですから引き渡し時には、まだ家づくりは完了していません。
つまり、うまくいかなかったことがあって後悔をし続けるよりは、
どんどん次のステップに進んでいくべきです。
後悔は何も生みません。
後悔を重ねるのではなく、逐次反省をし家づくりを完成させてみませんか。
6 固定観念に囚われすぎない
私たちが設計をするときは、
物理的に難しいアイディアであっても、「できない」を前提としません。
まずは、アイディアを膨らましていきます。
アイディアのエッセンスを活かす方法を考えます。
アイディアをずらして考えてみます。
既成概念を疑ってみます。
思い切って最初から考え直してみます……
何か、解決できる方法があるはずだと信じています。
例えば物理的に面積を増やすことが無理でも、
体験的に開放感を感じられる空間にすることができます。
「広さ」を「開放的な体験」に置き換えてみようという試みです。
家づくりは社会倫理や法律を前提とし、自由であります。
ですから世の中の規範や限界は一度疑った方がいい時もあります。
みなが同じであるのは、ある意味気味が悪いことです。
「できない」ではなく、「できるかも」と。
プロセスでアップグレードできることが家づくりにはあると思います。
こうした家づくりの障壁の多くは、
管理する側や製造者の理屈によることがあります。
大概は文化的な限界ではなく、合理性や効率が優先されたことによる限界です。
人が豊かに暮らすには合理性や効率の追求の結果がすべてではありません。
血の通った人間らしさや、大回りも必要です。
それは物や物事の本来の姿を取り戻すことでもありますし、
本質を理解することでもあります。
この話の詳細はまたの機会。
以上、若干偏った6選、いかがでしたか?
ちょっと書ききれていないので今後相当な加筆の予定です。
次回からは、数回にわたって家づくりのお金を詳しくお送りします。
2021/05/27 佐藤 勤 記
この項了
次回、5月28日(金)に更新予定です。