建築家・松尾和昭さんのブログ「階段の幅」
階段の幅
2014/12/24 更新
今回は階段の幅です。
建築基準法の規制から書くと、住宅では75cm以上取りなさいとあります。住宅以外の階段の幅は、建物の種類や床面積の規制によりますので今回は割愛します。
この75cmの根拠はというと、木造の従来の木割寸法から来ています。階段に割り当てられる幅は一般的に半間(90.9cm)が柱間の寸法です。そこから柱のサイズ、仕上げの厚さを引いていくと、最小値としておおよそ75.4cmになります。この寸法は柱が4寸(12cm×12cm)を想定しています。柱のサイズを下げると幅寸法は大きくなっていきますね。
この寸法から75cm以上という数値が出てきたことは明らかです。
柱のサイズが4寸より大きい場合は、階段部分の柱間を半間から広げて75cm以上を確保する必要があります。
現在の建築基準法では階段には手摺を付ける(片方でOKです)ことが義務付けられています。住宅でも同じです。
旧建築基準法との違いはこの手摺の義務の有無によりますが、手摺は壁から出っ張ります。出っぱらない方法もありますが、ここでは一般的なことを書いていきます。
建築基準法上では、手摺の出寸法が壁から10cm以内なら手摺は無いものとして階段幅を見ます。ほとんどの手摺は10cm以内に収まるように作れますので、先ずこのことで問題になることは少ないです。
場合によっては両方付ける必要があるかもしれませんが、その場合でもこの10cm以内の手摺は無いものとみます。
しかし法律上では手摺の出っ張りを階段幅から免除する規定があっても実際的には階段幅はその分だけ狭くなることは確かですので、その手摺の出っ張り分で減った幅寸法をどうするかということは色々検討が必要です。
数人で同時利用が考えにくい住宅用の階段であれば、肩幅よりやや広い70cmが通れば、利用に支障はありません。物を持って上がるとしても、引っ越しの時以外は75cmあればそれほどの問題は生じません。
ここで足などの障害がある場合を考えてみましょう。
足の障害がある人が頻繁に階段を昇り降りすることは考えにくいですが、それでもゼロではないはず。その場合、以前書いたように手摺に掴まりながらの動作になります。症状によっては両方の手摺に体重を乗せながらの動作も在ることでしょう。その場合は手摺を両方に付ける必要があります。
そのケースを考えると、あまり幅の広い階段は、こと住宅に関してはメリットは少ないと思えます。
しかし、階段昇降機のような設備を取り付ける予定があれば幅を広くする必要がありますので、ケースバイケースで対応が必要です。しかし、一旦階段を作ってしまった後に幅を変えることは大変な改造工事が必要になりますので、予想できるのであれば最初から広めに作っておいたほうがいいですね。
住宅以外の建物では、人がすれ違えるように120cm以上の幅が決められています。
このように階段の幅は建築基準法で建物の種類、面積で決められていますが、建築基準法に書かれている寸法はあくまでも最低の基準だということを理解してください。
階段を考えるときに必要なのは、寸法だけに目を取らわれないで、階段での転落死亡事故が多いことを考慮して、何よりも安全で上がり下りがし易い階段にすることが何よりも必要です。