建築家・松尾和昭さんのブログ「階段の踏面と蹴上げの関係」
階段の踏面と蹴上げの関係
2014/12/20 更新
このところ私が書いた階段に関する記事の内容に関するキーワードでの検索が多く見られましたので、今日は階段に関しての諸々のことを書くことにします。住宅の省エネルギー改修記事を期待されている方(おんなさっとやろか・・)、しばらくお待ち下さい。
と、前触れはここまでにして、まずは最初に、階段の足を置くところ(踏面ふみづら T)寸法と足を上げる(蹴上けあげ R)の適正と思われる目安の寸法関係式に
2R+T=650
というものがあります。例えば、踏面Tを300㍉とした場合、これに対する蹴上の目安となる寸法は
650-300)÷2=175
となるわけです。ただしこれはあくまでも目安ですので、これにこだわらないでケースバイケースで考える必要があるのはあたり前田のクラッカーですよ。踏面に対する蹴上をどれくらいにしたらいいのか迷った時には役に立つというレベルのものです。クリスマスの日にサンタのおじさんから褒められた赤い鼻のトナカイみたいなものです。
蹴上寸法は、階高(下の階の床仕上げからその上の階の床レベルまでの寸法)を何段で上げることにするかによって変わりますし、建築基準法で最低限の踏面と蹴上寸法が決められていますので、そのキャパの範囲内で検討して決めることが必要です。その際に、この式が目安として役に立つというわけですね。
その蹴上げですが、以前は横から見て踏面との関係はZ型にして作っていました。
例えば、踏面270ミリに設定した場合、その寸法は上の段の先端(段鼻)から垂線をおろし、下の段の踏面との交点からその段の段鼻までの寸法が270㍉と言うわけですが、その垂線との交点から段鼻までと逆方向に20㍉から30㍉程度、余分に作っています。この部分を「蹴込」といい、その寸法を「蹴込寸法」といいます。これが横から見るとZ型になるわけです。
つまり踏面には法寸法の270㍉プラス20㍉程度の蹴込が余分にあるので、実際には290ミリの踏面の寸法で作られてきました。
しかし実際にそんなギリギリにまで足を乗せる人がいるのでしょうか。そのギリギリにまで乗せても、まっすぐに脚を上げたら20ミリの出っ張りがありますのでそこで足を引っ掛ける恐れが大きいのじゃないでしょうか。
そうした理由から、バリアフリー仕様では、蹴込を無くし、Z型からL型に断面形状を変えることが推奨されています。つまり足のつま先が蹴込部分の仕上げ材に当たるほど奥まで乗せたとしても、まっすぐに足を上にあげても何も引っかかるものが無い状態にするよう求められています。私もそのほうが安全性が増すと思います。
もう一つ大事なことは、階段に手摺の取付が義務付けられました。前記は推奨ですが、手摺は建築基準法で明確に義務付けられています。
今回は階段の踏面と蹴上げの関係は、おおよその目安となる式があることを説明しました。
次回は、階段の幅に関して書きます。