建築家・松尾和昭さんのブログ「住宅の省エネルギー改修-3」
住宅の省エネルギー改修-3
2014/12/11 更新
今回は壁の巻。
冬季の壁からのエネルギーロスは19%です。窓などの開口部からのロス48%に比べると少ないようですが、面積が大きいので、この部分の断熱改修はコストもかかります。
室内側からの壁の断熱向上のための改修方法は、壁や天井の仕上げ材を取り外す方式しか今のところ見当たりません。住宅の断熱改修にあたり、壁の一部に穴を開けてそこからセルローズファイバーやウレタン等を吹き込んで充填させる方法をメーカーや断熱専門会社に問い合わせしますが、壁内の電気のケーブルなどにその材料が溜ることで充分内部に充填できなくなるとのこと。
やはり仕上げ材を撤去して間柱などをむき出しにしてから断熱材を吹き付けるか貼り付けるしか確実な方法が現在のところはなさそうです。
その断熱材の施工方法は新築と同じ方法になりますが、筋交いなどが入っている箇所や電気のボックスなどがある箇所では、グラスウールなどを充填する場合は断熱材の入れ忘れや無理やり押し込んでいるケースもよく見ます。
断熱材はその厚みに見合った空気量があってこそ性能を発揮するということを理解していれば、このような方法は断熱材としての効果を損なう行為になります。
それともう一つ注意が必要なことは、防湿層(防湿フィルム)の欠損です。
グラスウールは防湿フィルムに入っている製品が一般的になってきていますが、このフィルムの取り付け向きの間違いもよく見られます。
施工会社は何も要求しなければ大工がグラスウールも取り付けることが多いのですが、現場監督や大工に断熱に対する知識が乏しい人も多いため、上記したような間違った貼り付け方をすることがよく見られます。
そうならないために断熱材を取付る職人は、次の2つの内のどちらかの専門技術者によるように要求しましょう。
1.全国木造住宅生産体制強化推進協議会「住宅省エネルギー施工技術者講習修了者」
2.一般社団法人北海道建築技術協会「断熱施工技術者(ビルディング・インシュレーション・スペシャリスト(BIS)」
断熱材は少しでも隙間があるとそこから熱が逃げていき、結果的に断熱効果が損なわれ結露などの現象が起きてしまいますので、神経質なくらいに隙間をなくす事が肝心です。
断熱材はグラスウールなどの内貼り工法とセルローズファイバーなどの吹付け材に拠る吹付け工法に分けられますが、次に大事なことは、壁の中の空気が移動しないように壁の上下に「気流止め」を取り付けること。これはグラスウールか乾燥木材で、これも隙間なく取り付けましょう。
壁の中の空気が移動することでせっかく温めた室温が逃げてしまいます。この気流止めは断熱材を入れていない間仕切り壁の上下にも取り付ける必要があります。
まとめとして壁に断熱材を入れる場合の注意点は、
1.隙間のない断熱材を取り付けること
2.防湿フィルムを忘れないこと(吹付けの場合も同様)
3.外壁廻りや室内の間仕切りの壁の上下に「気流止め」を付けること
この3つをしっかりと行えば、断熱性能は格段に向上します。
今回は内壁の改修方法でしたので、次回は外壁での改修方法です。