建築家・松尾和昭さんのブログ「地鎮祭、棟上げ式」
地鎮祭、棟上げ式
2013/11/13 更新
確認済証も取りいよいよ工事着手という段階になり、建築主が頭をひねるのが毎度のことですが地鎮祭のやり方や神主さんや参加者への寸志をどうすればいいのかという問題です。
地鎮祭というのはざっくりした説明をすると、これからこの土地で工事を始めるにあたり、事故もなく工事を勧めさせてくださいと地の神様(地霊)にお願いをする行為です。
正月の初詣みたいなものです。
地鎮祭は建築地近隣の神社にお願いすることが普通ですが、とくにどこそこの神社でという要望でもない限り、一般的には施工する建設会社の方に依頼すれば神社への連絡や用意する品物などの段取りをしてくれます。
住宅に限定してみれば、こうした祭事は<strong>地鎮祭、棟上げ式、竣工式</strong>等が上げられますが、竣工式は非常に稀で、竣工式に変えて引き渡し後に工事関係者を招いて飲食するという形が見られます。
こうした祭事はしなければいけないということはありません。最近では省かれるケースもおおく有ります。
まず始めに行うのが<strong>地鎮祭</strong>です。
最初に書いたように、施工する工務店に依頼すれば全て段取ってくれますので心配は要りません。
均した敷地に1間(1.8m)四方の四隅に笹付きの竹(忌竹「いみたけ」)を立てます。
その竹を縄(しめ縄)で繋ぎ、その縄に半紙を折り曲げた紙垂(しで)を縄に取り付けます。
囲まれたエリアに邪悪な霊が入り込まないための結界を意味します。
そのエリアの中に北向きに神棚を造ります。
神棚には鏡、清めの塩、お神酒、魚、果物や野菜などが飾られ、玉串を置くための玉串案(たまぐしあん)という台が神棚の前に置かれます。
すべて準備が整った後、神主さんの地鎮祭を始めますを合図に地鎮祭が始まります。
並ぶ順番は神棚から神主、建築主、ご家族が最前列、設計者や工事関係者はその後ろに立ち神主さんの祝詞を頭を下げながら聞き入ります。
そのうち「玉串奉奠(たまぐしほうてん)」があります。
これは神主や参列者が玉串(榊の小枝に紙又は麻を付けたもの)を神前に捧げて拝礼することを言います。
神主さんから名前を呼ばれたら前から順番に神主さんから玉串を受取リます。その際には右手の甲を上にして根の方を持ち、左手の平を上にして葉を持つようにします。
胸の高さで持ちながら神前に進み、軽く一礼をしてから玉串を時計回りに4分の3回転させ根を神前に向け、両手で玉串案に添えます。
次にその場で深く二礼し、拍手を2回、また深く一礼(二礼二拍手一礼といいます)し、3歩下がって軽く一礼して右回りでもとの位置に戻ります。
神事が無事に終わったら直会(なおらい)です。
直会とは、かわらけ(素焼きの杯)にお神酒をついで乾杯する神酒拝戴(しんしゅはいたい)をします。
一般的な住宅での地鎮祭は以上で終了です。
その後に、建築主は神主さんに対し、初穂料を渡します。
この心付けの金額には決まりがありません。これも工務店にから教えてもらえばいいでしょう。
工事が順調に進んだ後は棟上げ式となります。
棟上げは神主さんを呼ぶことはまれです。
棟上げの儀式は地方で様々です。
九州に来て初めて棟上げした時、現場の職人が赤い手ぬぐいを頭や首に巻いたりしているのを目にした時は驚いた記憶があります。
東京ではそうした経験がなかったものですから。
餅まきの風習もまだ残っていたのにも驚きました。
しかしそうしたこともだんだん廃れていっているようです。
棟上げの時は、前日から土台を敷きこんで、当日は柱や梁を組む作業にほぼ一日かかることが一般的です。
小規模住宅では屋根仕舞いと行って、屋根の野地板(屋根の下地の板)まで張り上げるところまで行くこともあります。
棟木が取り付けられたら、大工の棟梁、建築主が棟木のところでお神酒を注ぎ、なにか祝詞を挙げ、棟飾りという縁起物の飾りを棟木に立てます。
この棟飾りは最上階の天井裏に納められます。
夕方から建築主、工事関係者、設計者監理者による祝宴を始めます。
今や、工事関係者も車で来ることが多いため、建築主で用意した弁当やお神酒を貰って早々に引き上げることが多くなりました。
建築主からのご祝儀としての初穂料は、施工側関係者には代表して工務店の社長に渡します。設計監理者にも渡します。
その費用もまちまちです。
工務店の社長に5万、工事管理者に3万、大工棟梁に3万、大工の手伝いにきた職人全員に5千円、設計監理者に3万というところが一般的でしょうか。
今の相場は変わっているかもしれませんが、こうした費用も雑費として用意する必要があります。
棟上げで喜ばしくはあっても、なんだかんだとお金が出るので頭の痛い話でもありますね。