建築家・松尾和昭さんのブログ「吊り天井の問題」
吊り天井の問題
2013/09/13 更新
福島の地震時に建物の損傷や損壊が起きたのは、地震の規模を考えると、やっぱり自然の力には傲慢になった人の知恵なんて木っ端微塵になるもんだわなと思いつつ、東京辺りでそこそこ多く発生したのが天井の落下。
プールや体育館など天井がかなり高い室内だと、その天井材が落ちた時の受ける被害は考えただけでも恐ろしい。
天井材って一般的に石膏ボードや岩綿吸音板などの材料を軽量形鋼(LSG)で組まれた天井下地にアルミのビスで固定されていることが多いんです。吊り天井と言われます。
このLSGってのは、吊りボルト、野縁、ランナなで構成されている天井下地の部材のことを指します。
比較的簡単に取り付けられていますが、従来は天井に関する構造検討はありませんでした。つまり天井材はどう見ても構造材ではないということから。
しかし建物が損壊しないで人に被害がでなくても天井材が落下してきたらその下に居た人が無事にいられるはずもなく、ここにきて国交省が大空間を持つ建築物の吊り天井の脱落防止対策をするよう、管理者、所有者に対して求めてきはじめました。日本建築学会からでもその対策を著した本が出ています。
大手建設会社でも対策をした工法を公表しています。
住宅程度の天井高さ3m以下程度ならそれほどの問題にはならないでしょうが、体育館とかの大空間では、災害時の避難場所として利用されることが多いため、天井材の落下事故は大きな人身事故につながります。
いま、そうした事故を避ける意味でも天井材を膜構造で作ることが注目されています。
膜なら落下しても人への損傷は軽いものだろうと思いますが、問題は天井が持つ様々な機能が膜構造が持てない。
天井には照明器具、エアコン、防煙垂壁、防災設備等がついています。
天井材が負担している重量はそこそこバカに出来ないほどです。
天井に付いているエアコンはさすがに重いので、上階の構造体や床スラブからボルトで吊り下げることが多いですが、それ以外は天井材に取り付いています。
それが膜構造では取り付けられなくなるので、全て天井付きのエアコン同様の方式で持たせるか全く方式を変えるしか手がなさそうです。
しかし人への安全性を優先すれば、その方式を早急に開発する必要が有るようです。
関係メーカーはすでに着手しているのかもしれませんね。
もし皆さんが体育館などへの避難せざるを得ない状況になった場合、頭の上に注意が必要です。
ヘルメットは必須アイテムですね。天井材の下に網が貼られているようなら、とりあえずは大きな落下物が下まで落ちてくることは無いでしょう。
各地の行政庁で、国交省の指導を受け、天井などの耐震性の調査にとりかかっているところが増えてきました。
本当にこの国は地震、台風、最近では竜巻等、建物に被害を与える自然災害が多すぎます。