建築家・浪瀬朝夫さんのブログ「「家づくりのヒント」第十四回」

「家づくりのヒント」第十四回

2018/09/09 更新

6.光…昼と夜

○変化する光と風景

元旦の夜明け、多くの人が良い年にと願って日の出を見つめます。夜明けの光は、私たちに門出や出発をイメージさせます。一方、夕暮れの空、赤く染まった光には何かしみじみとした感慨があり、暮れていくという言葉が終わりを告げるような一種の寂しさを感じさせます。周辺の緑の草木が黄色い色からしだいに紫へ、赤く染まっていく空を背景にして変化していく様子は、美しい一日が終わっていくことをゆっくりと告げているようです。北に対して地平線上に忠実に半円を描く太陽も、その光は一日の始まりと終わりでは、私たちにとって、まったく異なった光として感じられます。自然光は又、季節によってその傾きや強さが異なります。開口部を室内に効果的に配置すること…大きさ、位置、そして方位を考慮すること…によって、こうした自然光の変化をインテリアとして取り込めば、室内の白い壁でさえ様々な色あいに変化します。又、光が身体の生理に直接影響することも考慮すると良いでしょう。自然の光は身体を活発にしますが、寝室に東向きの開口部を設置すると、朝の光が身体に照射され心地よく目覚めることができます。


○ 夜の光

日中の活発な行動を終えて、夜には家族が揃い、家族の空間が広がります。自然光を開口部の設置の仕方で様々に取り入れるのと同様、人工照明による空間のしつらえは、就寝までの数時間、食事に会話、そしてくつろぎの風景を有意義なものにするのに重要な役割を果たします。さらに当然のことですが、同時に利便性を考えた計画をしなくてはなりません。部屋の用途や使い勝手によって、家の内部での様々な作業を支障なく行えるように、照度と位置、器具のデザインを考慮しなくてはならないのです。しかし注意すべきことは、部屋がいくつあっても、基本的に家はひとつの空間ですから、光の色あいを統一したほうが良いでしょう。蛍光燈があり、白熱灯がありでは、空間が分断されてしまう恐れがあります。空間の連続感の重要性は先にも延べましたが、夜の室内空間ではこの光の連続感がとても大事なのです。このことは照明器具のデザイン選択にも影響します。光はランプから器具を通して放たれるのですから、器具の形状や質感などにも配慮します。

光は物に照射しそのものを照らし出します。更に光は物にあたって反射します。室内の特徴を備えた部分に照明を当てたり、壁に反射させて部屋の一部分を明るくしたりすることによって、部屋に様々な表情が生まれます。建築的な方法によって、器具を隠して光だけを室内に放つこともできるでしょう。又、時間や目的によって、器具を使い分けることで変化をつけることも出来ます。食卓の料理が美しく見える適度な明るさがあり、また少し暗くなった部屋のコーナーに暖炉の火が赤々と美しく燃え、お気に入りの版画が柔かく浮かび上がる。一様な明るさとは異なり、光による演出によって、部屋に奥行きが生じるのです。先に述べた外部空間に照明演出を加え、室内と連続させることができたなら、光による奥行きの効果はますます増していきます。照明演出された空間では、音楽も美しく聞こえます。音はその場所の光の状態に影響を受けます。というのも、演奏者がどこかにいると感じさせることの出来る空間には、明暗と奥行きが必要だからです。


注目の建築家

ARCHITECT’S BLOG

建築家ブログ最新記事:RSS

某キッチンと洗濯乾燥機を使…

ナイトウタカシ

2024.11.21
昨日は、数年前に家づくりを一緒にさ...

建築家:ナイトウタカシ

某キッチンと洗濯乾燥機を使…

ナイトウタカシ

2024.11.20
昨日は、数年前に家づくりを一緒にさ...

建築家:ナイトウタカシ

某キッチンと洗濯乾燥機を使…

ナイトウタカシ

2024.11.19
昨日は、経年で変化して、魅力を増す...

建築家:ナイトウタカシ

住居棟(母屋)屋根部分葺き…

本井公浩

2024.11.18
横浜市青葉区プロジェクト [住居棟...

建築家:本井公浩

経年変化を愉しむのも魅力的。

ナイトウタカシ

2024.11.18
昨日までは、施主支給をする場合の ...

建築家:ナイトウタカシ

建築家ブログ記事一覧へ

ISSUE

how to use

建築家オウチーノの使い方

FAQ -よくある質問と答え-

専用フォームで24時間お問い合わせ受け付けます

一般の方、建築家の方、不動産会社の方専用フォーム

TRUSTe

このページの先頭へ