建築家・浪瀬朝夫さんのブログ「「家づくりのヒント」第十三回」
「家づくりのヒント」第十三回
2014/05/27 更新
5.外部空間について
○延長された空間
外部空間とは、ここでは家から敷地境界線までに広がる空間を指しています。
外部空間については「窓、開口部」の節でも少し触れたように、開口部を通して私たちに様々な効果をもたらしてくれます。その一つが内部空間を拡張させる働きでした。テラスに面した大きな開口部は居間や食事の部屋を広がりのある空間にします。又、足元の小窓も日中足元を照らすだけでなく、家の外、地面の一部を見せてくれるので、その部分の空間が延長しているかのような感覚を持つことができます。開口部を効果的に配置し外部の景色に合わせ、その部屋の用途に沿うよう大きさや形を決定していくと、その空間は外部へと自然に延長され、壁の存在さえ消し去ってしまいます。開口部はガラスの透明感を利用して内部と外部の空間相互を融和させるのです。このことは、限りのある家の大きさに対して、さらに限りのある敷地をすべて利用して家をつくることを意味しています。敷地は建物の「残り」ではなくなるのです。
土地選定の際の様々な決心は、敷地をすべて住まいとして活用することによって、「納得」と「満足」を後日与えてくれるものとなります。住まいとして敷地を上手に活用し、しかも敷地全体が家の内部空間と常に関係を保つような家は、先に延べた「場所」の感覚を住む人に印象づけて、敷地すべてを生活の場として生き生きと機能させるのです。
○ 外部空間の活用
外部空間は開口部と室内の関係で成立しますが、外部空間に工夫を与えると先に述べた効果を更に増大させることができます。
「空間」の節でお話したように、空間には事物が必要でした。逆に言えば事物には空間が常に存在しています。古い寺社を訪れると、広い境内の中にぽつんと本堂があったりします。本堂の大きさに対して境内が広すぎると感じることはあまりありません。本堂には神や仏が祭られていることをはじめから承知しているために、そんなことは考えないのです。お堂の占める空間が神聖さを保っていることも手伝ってはいますが、むしろ神聖さそのものが占有している空間を私たちは知らず知らずのうちに了解していると言っていいでしょう。そこにあるものを理解すると、そのもの(事物は)は占有空間をその瞬間獲得するのです。
こうしたことから、外部空間に物が置かれた場合、それが住む人にとって親しみのあるものであればあるほど、強い占有空間を持ちます。親しみのあるものの占有空間まで、住む人は自分の親密な領域を広げようとするのです。その結果、テラスにお気に入りの椅子やテーブルを置くだけで、テラスを自分達の占有空間の延長、親密な領域と認識します。窓越の小さな庭に、大切な人から送られた樹木を植えれば、なおさら、その庭は特別な外部空間となって内部で生活する人に安らぎを与え、外部と内部の二つの空間を分けることなく、そこに広がる空間全体を自分の空間にすることができるのです。小さな庭まで空間はひとつに感じられるでしょう。
物と空間の性質は、外部空間に限られたことではありませんが、敷地全体を住まいとして活用するためには、外部空間だからこそ、そうした工夫が効果的なのです。