建築家・浪瀬朝夫さんのブログ「「家づくりのヒント」第八回」
「家づくりのヒント」第八回
2013/11/27 更新
第二章「家」
ここから家について具体的にアプローチします。敷地からはじめ、家を決定づける各構成要素に着目して、それらにどのような性格があるかを考察します。
1. 土地・敷地
家を建てる場合、建替えと新たな土地を手当てし新築する場合があります。新たな土地を手当てする場合は、通勤の利便性、子供の通学や将来の生活スタイルの変化、そして都心なのか郊外なのか、土地の価格といった諸々が条件となるでしょう。そうした条件のうちいくつかの重要な条件が優先されて、土地は決まっているようです。建替えの場合の土地であれ、新しい土地であれ、敷地は私たち建築家にとって最初に提示される家作りの条件となります。敷地にはそれぞれに固有の特徴があって、その読み取りが最初の仕事となります。
敷地周辺の環境、とりわけ敷地を中心とした周辺状況にまず注目します。建替えの場合は、既存家屋の調査から入ります。各室の窓からどんな風景が見えるのか、どのような光が差し込んでくるのか、庭の利用状況や隣地との関係や土地の現況など調査します。当然既存家屋での生活の利便性や特徴などもヒヤリングし、後の設計に役立てます。更地になった時には再度調査に訪れますが、例えば二階からの風景などは、既存家屋がある時にしか出来ない調査のポイントになります。
更地の場合は敷地の真ん中に立ち、三百六十度見渡した時何が目に入るかをチェックします。道路の反対側の景色、隣地の景色、道路の交通量(人、車)、それぞれの方位、隣接する家屋の形状、階数、窓の位置、広範囲な土地の起伏等を観察します。その後、敷地に関する技術的な調査を行うのです。
こうした調査事項をベースに、家の内部についての様々な要望を取り入れた計画を作っていきます。敷地の中央にまず立ってみることが重要なのは、そこで観察した状況が、後日形作られていく家のそれぞれの内部空間に非常に影響してくるからなのです。敷地のどの部分にはどのような光が差し込んでくるのか、どのような風景が広がるのか、道を行き交う人の視線は、騒音は…、そうしたことすべてが空間を計画する上での条件になります。そしてそれらの条件が、内部空間の構成とうまく合理的に融合した時、家はその全体像を現わします。
家が完成した後、敷地は家と同様、前章でお話した広い空間の中の住む人の為に切り取られた空間として成長していきます。家に行きつくまでの道のり、街や自然の風景、そして家屋の中から見える外部の風景、光や風、家を取り巻く環境が「経験」となって、その場所を家族の又は自分の「場所」にしていきます。敷地の固有性と新たに建つ家が上手に結びつき、一体感を得ることの必然性はそこから生じるとも言えるのです。