建築家・浪瀬朝夫さんのブログ「「家づくりのヒント」第一回」
「家づくりのヒント」第一回
2013/10/06 更新
はじめに
昨今、「 住宅―住まい」に対する関心は以前にも増して高まっています。家を建てようとする人々が、出来合いの家ではなく、自分らしく住まう家、より快適に暮らせる家とはどのような家かを真剣に考えています。豊かさへの希求は今日、自分の、または家族の日常生活の場へと向かっているように思えます。
建築の設計を日々行う私達は、クライアントから提示される要望を、構造、コスト、性能、敷地環境といった多面的な問題と組み合わせ一つの解答を引き出しデザインします。クライアントのための世界でたった一つの家は、それぞれの問題がバランスよく解決できた結果であると信じています。
デザインの過程では、もっとも重要で、しかもそれを間違えるとすべてが失敗に終わるといった、最初のアイデアの段階があります。先に述べた様々な条件を確かめながら、一方でそれらを引っぱりそれらを統合していくアイデア、結果として住まいの性格を決定づける意図とでもいえるものが、実は設計の始まりなのです。
家に関する資料や書籍は専門家向けのものが多く、又一般向けのものも、実際に家を建てた体験談や住宅の構造、性能(機械的な性能)に関するものが大半を占めています。ここではいくつかの住宅を実践するなかで、私たちの事務所が考えてきたこと(一般的で場合によっては普遍的と思えることも含まれているかと考えます)が述べてあります。住宅をつくる前に考えておきたいこと、知っていると家の最初のアイデアに効果をもたらすこと、機械的な性能以上の、家族にとっての「住まいの性能」に役立つこと…。これから住宅をつくろうとされている方々にとっての、「 家づくりのヒント」となれば幸いです。
目次
第一章 空間・領域・場所
1.「空間」という言葉
■空間の意味
■個人の空間
2.「領域」
■個人の領域
■広がる領域
3.「場所」について
■経験と場所
■領域と場所
第二章 家
1.土地・敷地
2.窓、開口部
■窓と風景
■広がる空間
3.部屋
■閉じた部屋
■開いた部屋
4.奥行き
■奥行き
■奥行きのある家
5.外部空間について
■延長された空間
■外部空間の活用
6.光…昼と夜
■変化する光と風景
■夜の光
第三章 住まいの本質
1.安らぎと活力の場所
2.記憶を育む家