住まいの防音・遮音対策
~ピアノ他、防音室設置編~
自宅で楽器の練習をしたり、大音量で映画や音楽を楽しんだりしたい場合、近隣への騒音とならないよう、専用の防音室を設けるなどの対策が必要になります。ここでは、そんな防音室に必要な知識を紹介しましょう。
ピアノ、ドラムetc…楽器演奏のための防音室
自宅で楽器を演奏したい場合は、演奏する楽器の種類や楽器メーカーによっても音特性や音圧レベル違いがありますので、求められる防音・遮音性能が異なる点に注意が必要です。例えばピアノの音圧は約90~110デシベル(dB)なので、ピアノ室にはD-50からD-60程度の遮音等級(遮音等級についてはコラム参照)が求められます。一方、ドラムの音圧は最大130dB程度にもなりますので、ドラム室には最低でもD-65からD-75程度の遮音等級が求められます。
また、ピアノの音圧は、小さなお子様の場合は80~90dB、大人の場合は90~100dB、プロの場合は110dBと、演奏する人によって異なると言われています。防音室は、演奏する人や楽器ごと、演奏時間を考慮し遮音性能を考えてつくる必要があるのです。
- 施工例:ドラム演奏可能な防音室
組み立て式の防音室(簡易防音室・防音ブース)
防音室をオーダーメイドでつくるとなると大がかりな工事が必要となり、コストも高くつきます。また、それなりのスペースがなければ設置することができません。
そうした悩みを解決してくれるのが、YAMAHA(ヤマハ)などの楽器メーカーや防音工事業者が販売している「組み立て式防音室」です。1人で練習するための小さなものから、ピアノを置いてレッスンができる大きなものまで、用途に合わせてさまざまな大きさのタイプがあります。またパネルやドアを指定のとおりに組み立てる仕組みなので、建物に大規模な改修を行うことなく設置できる点が魅力です。いろいろな制約があって防音室をあきらめていた人には選択肢の一つといえます。価格も数十万円程度からと、オーダーメイドに比べ安価。ただし、組み立て時の施工スペースや組み立て後のお部屋のデッドスペースは勿論、目的に対して十分な防音性能があるかどうかはしっかりと見極めたいポイントです。
- 施工例:組み立て式防音室
ホームシアター・オーディオルームの工事
ホームシアターやオーディオルームにとって、外部への音漏れを防ぐための防音・遮音性能はもちろん重要ですが、よりよい音で映画や音楽を楽しむためには、最適な広さや天井高さにすること、また遮音材と吸音材をバランスよく配置することなどが非常に重要になります。このさじ加減はとても難しいため、本格的に楽しみたいなら、リスニングポイントや臨場感などの事も考えDIYや自作ではなく設計の段階から専門家に依頼するのがよいでしょう。
戸建て住宅にホームシアター、オーディオルームをつくる場合、一般的には、音が外部に漏れにくい地下室に設置するケースが多いようですが、単純に大きな音で楽しめる防音室があればいい、という場合は、壁や床に防音性を持たせたり、密閉性の高い防音ドアを使うことで、ある程度は防音が可能です。
- 施工例:ホームシアター
(画像提供:D.S.Pコーポレーション株式会社)
防音・遮音工事の事例
自宅でのピアノ教室を実現する防音室/施工費用250万円
防音室入口部分をインナーサッシで施工した事により、リビングルーム側からはもちろん、防音室内からも開放的で居心地の良い空間を実現。講師にも生徒にも優しい音楽室が完成しました。
バンド練習も可能な広いドラムスタジオ/施工費用525万円
新築でスタジオ建設のご相談を頂き、弊社で防音工事の施工をさせて頂きました。仕上がりで「12帖」の広さをご希望でしたので住宅メーカーさんと協力し、イメージ通りのスタジオが完成しました。
マンションでの声楽・ピアノレッスン室/施工費用267万円
既に竣工している分譲マンションの洋室を解体し、防音室にリフォーム。ピアノの搬入経路と、閉塞感の緩和を配慮し、サッシタイプの出入口を採用しました。
住居の新築と同時に完成したドラム室/施工費用420万円
新築でドラム室のご相談を頂き、弊社で防音工事の施工をさせて頂きました。出勤前の早朝や、帰宅後の夜間でも近隣を気にせずドラムプレイをお楽しみ頂いております。
都内マンションでのホームシアター/施工費用575万円
マンションで、近隣にご迷惑がかからないシアタルームを、とのご相談を受け施工させて頂きました。壁面の仕上げにはプロジェクター用のクロスを採用し、大迫力の画面をお楽しみ頂いております。
遮音等級を知ろう
ピアノやギター、ドラムなどの楽器を自宅で演奏したり、カラオケの練習をしたりする場合、外部に音を漏らさないための「遮音性能」が重要になります。遮音性能は、JISで規定されている「D値」(遮音等級)で評価されます。D値が大きければ大きいほど遮音性能が高く、演奏する環境や楽器によって、必要とされるD値は異なります。例えばマンションでピアノを演奏する場合を考えてみましょう。D35~D45だと、隣室の人がどんな曲なのかが聞き取れるほど聞こえてしまいます。これがD50になると「小さく聞こえる」程度になり、D55になると「かすかに聞こえる」程度になります。通常はD55で十分な遮音性能ですが、例えば夜遅い時間にピアノを弾きたい場合などは、D65以上の遮音性能を備えておきたいところです。