ワンニャンペット共生住宅

ペットだって家族の一員――愛犬家や愛猫家の中には、そう考える人も多いことでしょう。そんな大切な「家族」と暮らすための住まい、いわゆる「ペット共生住宅」のあり方に、近年、注目が集まっています。今回は、豊富なアイデアと経験を持つ建築家が、理想のペット共生住宅について存分に語ります。

  • 愛犬のための住まい編
  • 愛猫のための住まい編
  • 動物行動学からみる家づくりインタビュー

建築家・柳沢伸也さん、柳沢陽子さんが語る
猫と暮らす家づくり「3つのポイント」

同じペットでも、犬と猫とでは行動のパターンが大きく異なります。犬にとって住みやすい家でも、猫にとっては住みにくいケースがあり、その逆もまた同様なのです。ここでは、猫との暮らしを望んだお施主様の要望をすべてかなえた柳沢伸也さん・陽子さんに、作品事例「見沼の家」での仕掛けを交えながらお話を伺いました。

猫

猫にとって居心地のよい住まいは、人に快適な住まいのヒントといえそう

人にとっても気持ちのよい空間をつくる

猫の写真

建築家によるペット共生住宅「愛猫編」

今回、「見沼の家」のお施主様は、猫といる時間、猫と過ごす時間をとても大切にされていると、初回の打ち合わせで深く感じました。その時間、空間をさらによいものにすることは建築家の使命ですから、さまざまなスタディを重ねて「見沼の家」を設計しました。そうしてわかったことは、「人間にとって気持ちのよい空間」をつくることが、結果猫にとっても気持ちのいい家づくりにつながるということ。猫は、家の中でもっとも快適な場所を探す生き物です。猫との共生をつねに考え、それぞれの季節ごとに猫が気持ちのよい場所をつくりたいと考えていくと、結局、人にとっても心地よい家ができあがったのです。

猫が絵になる空間をつくる

猫の写真

猫の写真

(上)猫専用の坪庭スペース。こちらが柳沢氏オリジナルのブロック。
(下)構造柱に荒縄を巻きつけて猫の爪とぎコーナーに。こちらも柳沢氏のアイデア。

猫と人が気持ちよく、豊かに暮らすためには、「猫が絵になる」空間をひとつでもつくることが大切です。犬と違って、猫は水平方向ではなく上下方向に移動します。こうした猫の行動特性を考えて設えたのが、猫のための坪庭のようなスペース。孔のあいたオリジナルのブロックを2mほど立ちあげ、孔の部分に可動式の段板をはめられるようにしました。高いところをひょいひょいと気ままに猫が移動するスペースは、玄関のすぐ隣に位置するため来客時にも目にとまりやすく、まさに「猫が絵になる」、この家のシンボル的な場所になりました。これも、猫のためにと考えた仕掛けが、人間にとっても楽しいものになったひとつの例と言えるかもしれません。

動線を考える

これは猫だけに限りませんが、やはりペットの行動を許容する範囲と制限する範囲は決めておくべきでしょう。ただ、完全に仕切ってしまうのではなく、必要に応じて開閉できるような仕組みが理想です。最近では、ドアの下に孔をあけて設置する、スイッチで開閉を切り替えられる猫用扉が発売されています。こうした装置を、動線を考えた上で建具に自由に配置できるのも、建築家との家づくりのメリットでしょうね。

柳沢伸也+柳沢陽子

柳沢伸也:1994年早稲田大学大学院建設工学修了。同大学院にて、まちづくりや参加のデザインについて学ぶ。(株)日建設計にて、数多くの教育施設、商業施設等を手掛けた後、建物の保存・再生に興味を持ち、ミラノ工科大学に留学。帰国後、やなぎさわ建築設計室を開設し、家族のライフスタイルにゆったりと寄り添うような長寿命住宅の設計に取り組んでいる。
柳沢陽子:1995年日本女子大学住居学科卒業。横浜市にて教育施設の設計・建設に携わった後、ミラノ工科大学にて建物の保存・活用とまちづくりについて学ぶ。現在、子育て真っ最中。自身の子育て経験を通して、家族を幸せにする豊かな住宅の創造を目指す。

建築家によるペット共生住宅「愛猫編」

素材、動線、仕掛けと間取り・・・。お施主様からのご要望に対して、建築家がどのような答えを導き出したのか。「愛猫との共生住宅」4つのケースをピックアップしてご紹介いたします。

猫と大型犬が仲良く暮らせる上下分離の空間づくり
それぞれが独立した動線を持つことで、ペットがストレスフリーに

建築家・石川淳さん

お施主の「ペット共生住宅」要望

  • ・上下分離の二世帯住宅で玄関のみを共用としたい。
  • ・黒猫と犬(ゴールデンレトリバー)のための配慮がほしい。
  • ・石川淳らしいデザインにしてほしい。

ペット共生住宅についてのお考え、本作品事例で工夫した点
本作品のお施主様は黒猫1匹とゴールデンレトリバーを飼育されていらっしゃいました。最近のペットは室内飼育が多いので、非常にストレスを抱えていると思います。また、人に都合が良いだけでなく(床材が掃除しやすいとか)ペットが室内で、なるべくストレスを発散できるような作りが必要だと考えました。
そこで、こちらの作品事例では、1階に中庭を設け、犬が外部の空気を満喫できるようにしました。建て替え以前の家では小さな猫が犬から逃げるようにタンスやソファの背もたれの上を歩いていました。それを解消するため、猫専用の通路をキャットウオークとして壁や天井付近につくり、犬と猫がそれぞれ移動する空間を上下にわけました。
猫はキャットウオークを伝って家中をぐるぐる楽しそうに歩いています。お施主様はそれを見るのを大変楽しまれています。また、犬と猫とそれぞれの動線を確保できたので、お互いがストレスなくすごしているようです。

明るい室内

キャットウォーク

中庭へ向かう愛犬

ペットたちのストレスを軽減させるために、おのおのの動線をプランニング。写真上はキャットウォークを楽しそうに歩いている愛猫の様子、写真下は、外との行き来ができる中庭へ向かう愛犬

猫が楽しく遊べる仕掛けを随所にプランニングし
耐性に優れた部材を使用することで、人と猫が快適な空間へ

建築家・木戸扶紀子さん

お施主の「ペット共生住宅」要望

  • ・愛猫の遊び場をたくさん設けたい。
  • ・愛猫と暮らすため、内部の素材については、傷がつきにくく汚れにくい、メンテナンスがしやすいものを採用したい。
  • ・お母様がある程度独立した生活を送れるような間取りにしたい。

ペット共生住宅についてのお考え、本作品事例で工夫した点
本作品のお施主様は夫婦+母+愛猫4匹(スコティッシュフォールド他)と暮らしてらっしゃいました。 愛猫の遊び場については、出窓の奥行きで空間に広がりをもたせ、猫の居場所としたり、家具のような階段や穴のある壁とあわせるなど、猫が遊べる要素を多く設けました。
すべての部屋は引戸でしきり、季節のよいときは、へだてなく動き回れるようにしているため、扉には猫窓をつけています。 狭小地で縦の動線の多くなりますが、将来、お母様があまり移動せずに生活ができるよう、1階に、水回りとミニキッチンつきの個室を設けています。
仕上げについてですが、爪をたてられないように腰壁をメラミン材にし、床は、無垢合板フローリングにガラス塗料を塗布したものを使いました。
表面硬度が増し、対傷性が増すと共に、防汚性、耐久性が向上するということで、毛玉を吐いてしまう場合などに対応しつつ、できる限り自然素材で、というお施主様のご要望にそって木のぬくもりを活かしています。
また、地下、1階にそれぞれ猫トイレを設置できるよう、収納や洗面台の下をオープンにしています。
引渡後に猫がさらに増えて、楽しく遊んでいるようす。それぞれに好きな場所があるようでなによりです。

木の温かみを感じる室内

木の温かみを感じる室内

木の温かみを感じる室内はエコ&愛猫にやさしい仕様と仕掛けがたくさん

地下を含めた3層の大規模な一戸建てリノベーション
4匹の猫たちが楽しく暮らせる仕掛け

建築家・杉浦 充さん

お施主の「ペット共生住宅」要望

  • ・かつて自営業の事務所と倉庫として使用していた地下を含めた3層の全てを居住スペースに変更したい。
  • ・手狭な個室配置プランをなんとかしたい。
  • ・地下は漏水で湿気がひどく、マスク無しでは次の日に声が出なくなってしまうほどカビが繁殖した状態なので防水をしっかりしたい。
  • ・4匹のネコ達が楽しめるような住まいにしたい。
  • ・開口部からの音漏れや断熱性能をなんとかしたい。

ペット共生住宅についてのお考え、本作品事例で工夫した点
人にとって無駄な部分はペットにとっては実は楽しいスキマだったりします。かつて人のために用意された地上から地下への外部階段ですが、トップライトや天井が設けられて内部化し、残された階段状の行き止まりスペースは天井付近に開口を設け、箱形の家具を設置することで猫の恰好の遊び場となりました。箱形の収納家具(通称「ネコ棚」)、屋上への鉄骨階段に丸い穴を設けたりと新設部分にも遊びを凝らしました。
ネコドアにはじまり、ネコ穴、ネコ棚、屋上にゃんグルジム等の設置、人様にとっては無用の長物となった地階から地上への外部階段はディスプレイ棚兼、ネコ専用の階段としました。
床は無垢材の欧州アカマツのオイル仕上げ。床暖房を設置しています。
人の居住空間についてですが、既存の廊下+個室という不効率な間取りを一新するために、鉄砲階段は撤去して螺旋階段を新しく設けるプランを提案することで、ただ移動するための通路に面積が消化されないようにし、2世帯の面積を確保しながらゆとりのある居住空間を実現しています。
シアタールームとセカンドリビングを配した地下フロアは、適切な防水処理とトップライトや機械換気の追加などにより、採光と換気ルートを確保しし、湿気やカビに対する対策を施し快適な地下空間に生まれ変わりました。

新しく生まれ変わった室内

新しく生まれ変わった室内

新しく生まれ変わった室内

新しく生まれ変わった室内。ネコ4匹がそれぞれのスペースで楽しく暮らしている

賃貸物件をペット可物件に大幅リノベーション
人も猫も心地よい空間づくりは、ほどよいバランス感にあり

建築家・竹内国美・竹内由美子さん

お施主の「ペット共生住宅」要望

  • ・貸家の修繕と再生、賃貸物件として魅力的な空間へのリノベーション。
  • ・ペット可能物件としての工夫とメンテナンス性の確保すること。

ペット共生住宅についてのお考え、本作品事例で工夫した点
限られた予算の中でも、プランの配慮やちょっとした工夫、仕上げの選択等で、ペット共生住宅をつくることは可能です。ペットと共に暮らす事を積極的に考えてそれを住まいづくりに活かせば、ペットにとって快適なだけでなく、自分たちにとっても個性的で居心地良い住まいになるでしょう。ただし何事もやり過ぎは禁物。ペットの事や、メンテの事ばかり優先すると、人間の居心地を損ない、それがかえってペットのストレスとなり本末転倒の可能性もあります。程よくバランスをとる事が大切です。
こちらの作品事例は賃貸アパートのリノベーションです。1階部分はペットが自由に動き回れるように、またメンテを配慮して床仕上げを全て塩ビタイルとしてワンルーム的な空間としました。狭小ですが庭もあり、下小屋のような外空間は壊さずに、そこに新たな動線を確保し部屋に入れない犬のためのスペースやブラッシングスペースとして活かしています。
一方で2階はあえて畳の床とし、人の生活を重視した空間となっています。山手線の駅から徒歩10分程度、田端という土地柄にあった和の趣があるデザイン、耐震補強を施し、かつペットと快適に暮らす事のできる安心で都会的な貸家に生まれ変わりました。
ペットはえさ場、トイレの場所、寝るところは必ずしもこちらが想定した場所を使ってくれない可能性もあります。いくつか複数の場所を想定する等、ある程度巾を持ってプランや工夫を考える事が大切です。例えばあえてメンテに向いていない自然素材を使う等でペットが自由に振る舞えストレスを減らす場を設ける事で、コントロールする事も大切です。メンテ重視の素材は感触の良いものでない場合も多く、特にペットは敏感なのでストレスとなる可能性もあります。あまり型にはめすぎない「ゆるさ」も大切だと思います。

おかげさまで即日ご契約

おかげさまで即日ご契約

建物竣工時の見学会では、何組ご来場いただき、即日ご契約ということがありました

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