時代に新風を吹き込む建築家たち

2011.6.24

ひとつの家族と醸成するコミュニケーション

矢田義典(有限会社矢田義典設計室)

家づくりという目標に向かって、施主と建築家はどう付き合うのがいいのだろうか。矢田氏は「時間をかけてひとつの家族の相談を受けたことがいい体験だった」と語る。建物の好き嫌いではなく、その家族を理解することが大切だという。

インタビュー、構成:建築家O-uccino編集部

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──矢田さんは営業マンだった25歳の頃、建築家になりたいと思ったとのことですが、どの点に魅力を感じたのですか?

仕事で出入りしていた建築事務所で図面を見たとき、「夢があっていいなあ」と思ったのがきっかけです。デザインしたものが形に残るのがすごい、と。実際に建築家になってからは、クライアントの要望と敷地や環境などの条件をまとめるプロセス、職人さんとのコミュニケーション、基礎から始まって少しずつ出来上がっていくダイナミックなところなどに魅力を感じています。

──矢田さんが考えるいい家とはどんなものですか?

誤解を恐れずにいうならば「ふつう」であることです。ニュートラルで、まわりになじんでいて、住んでいる人が飽きない、住むほどによくなる、そんな末永く愛される家ですね。その上で、お客さんとご家族の好みや土地の形などを考えます。見た目がきれいで機能的であることも大事ですが、他人には少し使いにくくてもその家族にはベストな設計もある。こういう考え方を大事にしています。ひとつひとつ違う家族に合うものを考えるわけです。

──そういった中で、印象的な体験というと……

一緒に土地探しから始めたクライアントさんがいて、物件の決定に3年、家ができるまで4年かかりました。それだけの期間、一緒に家づくりをしていると、付き合いも深くなり、建築のことだけでなく色々と話をしてもらえるようになってきます。さらに、クライアントさんのお姉さんの家、お母さんの家も担当することになり、ひとつの家族から一族へ、昔の町医者のようなお付き合いをしてもらえようになりました。とても嬉しく感じています。

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──家族で住み継ぐという点では、リノベーションも注目を浴びています。

古民家再生などの活動もやっていますが、客観的に見てただの古い家でも、使う人が価値を見いだしているなら、ぜひ後の世代のために残していってほしいと思っています。ただ、建て方やリノベーションがすべてを解決するわけではないので、住み手も、子孫に残そう、という意識を持って、日ごろからメンテナンスをしてほしいですね。

──それは地震などの災害への備えにもなりますね。

そうです。建築基準法さえ守っていれば安全というわけではありません。ひとまかせの基準に頼るのではなく、住み手が自分の判断で、安心と安全を確保するという視点がこれからは必要になるでしょう。

矢田義典(有限会社矢田義典設計室)

photo 1964年 愛知県生まれ 1987年 東洋大学経済学部卒業 1995年 名城大学Ⅱ部建築学科卒業 1997年 愛知県立芸術大学修士課程(美術学修士)修了 2001年 矢田義典設計室 2004年 (有)矢田義典設計室 2004~2005年 バンタンキャリアスクール 非常勤講師 2005年~ 名古屋芸術大学 非常勤講師 2010年~ 愛知淑徳大学 非常勤講師

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