「家族のつながり」をつくるためのデザイン
信濃康博(信濃設計研究所)
「家族」とひとくちに言っても、今やサラリーマンと専業主婦、子供といった典型的な「家族」は少なくなった。これから家族のあり方はどうなるのか? そこで信濃氏が語るのは、家の構造や間取りを通じた「家族のつながり」のデザインだ。
インタビュー、構成:建築家O-uccino編集部
──建築の道に進んだきっかけは何ですか。
子供のころ、アニメやマンガを見て、ロボットやメカにあこがれたことが原点ですね。「サンダーバード」や「マジンガーZ」の基地やロボットを夢見て、そのまま建築家になったような感じです。
──建築は楽しいものだったんですね。
建築は世界中どこにでもありますし、各地の風土や環境、時代変遷などを反映しているので、見ていて楽しいですね。
住宅を設計する場合でも、お客さんも違えば、敷地も環境も風土も違います。同じ土地はどこにもありません。お客さんと一緒に、世界にひとつしかない家を作っていると考えると、「意義深く、やりがいのある仕事である」と感じます。
──どんな家をつくっていきたいですか。
自分で家をつくろうとする人は、家族を大切にしている人が多いので、家族のコミュニケーションが上手くいく家をつくりたいですね。
たとえば、間取りも家族のコミュニケーションを左右します。リビングを通って二階に行くようにしたり、個室の真ん中にパブリックな空間を作ったりすれば、家族が自然と顔を合わせるようになります。このように、家族のコミュニケーションが自然と促進していくようなプランを考えていくことが大切だと思っています。
──通るときに顔を見たりするような、自然なコミュニケーションというのは重要ですね。
これまでのような、画一的な「理想の家族像」というのは既にないので、クライアントそれぞれの家族像をじっくり考えていただきたいと思っています。
最近は、「大きな子供部屋はいらない」「みんなが集まれる大きなLDKをつくってほしい」というご家族が増えてきました。「つながり」を求める時代の流れを感じます。住宅の設計とは、家族の「つながり」を設計することでもあるのです。
このような家族のつながりを大切にする住宅を複数集めて開発されたコーポラティブ・ビレッジなど、ご近所や地域とのつながりを求める現象も広がっています。
建築家として、人々の夢やあこがれが変化してきたこと感じ取って、これからの家づくりにも反映していくつもりです。
信濃康博(信濃設計研究所)
1965年 新潟県生まれ
1984年 宇都宮大学建築工学科
1988年 宇都宮大学修士課程
1990年 株式会社葉デザイン事務所勤務
1994年 信濃設計研究所 埼玉事務所 設立
1999年 福岡事務所 設立