建築家と大工だからできる「自由な家づくり」
松井都恵(ヴィーヴル建築設計事務所)
「間取りを考えるのが大好き」。そんな女性が大工と結婚して設計事務所を開いた。夫婦2人でつくるのは「生活しやすい家」。松井氏が設計し、施工は夫が担当する。一貫受注のメリットを活かし、完成後のメンテナンスなども手軽な、住み手に優しい家をつくる。女性建築家と大工とのタッグだからできる二人三脚の家づくりとは?
インタビュー、構成:建築家O-uccino編集部
――いま松井さんが力を入れていることはなんですか。
暮らしやすさ、女性の視点というのを一番大切にしています。
私は、子どものころから間取りやインテリアを考えるのが好きで、そこから建築の道に進みました。空間の暮らしやすさには強い思い入れがあります。
通常の注文住宅では、設計と施工は別の業者が担当しますが、うちは施工まで夫婦で一貫です。だから、思い描いたアイデアを形にしやすいわけです。
――ほかに夫婦で設計施工を一貫できるメリットというと?
コスト的に有利だったり、デザインに対する施工側の声をすぐに聞けたり、といろいろありますが、ひとことでまとめると「自由な家づくりができる」ということです。
自由設計の注文住宅といっても、実際に設計事務所に相談すると、予算が厳しいとか施工が難しいとか言われて、「自由じゃないじゃないか」というお客さんはよくいらっしゃいます。
対して、私たちは「それはできません」と言わない。お客さんの夢をつぶさず、できる限り予算の範囲で実現できる提案をします。
――夫婦で話し合いながらプランをつくるのですか?
基本的には、私が設計します。建てるときの現場監理は夫です。
ただ、打ち合わせや設計の際、施工側の意見が聞きたいときは、アドバイスを求めます。「お客さんはこういうのを希望しているんだけど、できる?」という具合ですね。
意見がぶつかるときもあります。夫から「絵を描くのは簡単だけど、つくる方は大変なんだよ」と言われたり…。泣きながら大喧嘩したこともあります。しかし、近しい人間だからこそ、言いにくいこともどんどん出して、活発に意見交換できるわけです。ときにぶつかるのもいいことだと思いますよ。
――どんな家をつくりたいですか?
お客さんの希望が最優先ですが、私としては、生活がしやすくなるよう細かい配慮をするように心がけています。家事のやりやすさ、収納のつかいやすさ、メンテナンスの手軽な住まい、奥様の声を伺いつつ、こういったポイントを押さえた家をつくりたい。いつでも施工側に相談できるから、難しそうなことでも「できますよ」と言えるのです。
松井都恵(ヴィーヴル建築設計事務所)
1995年~2000年 某分譲住宅メーカーにて注文住宅の営業・設計・コーディネーター担当 2008年~2011年 某工務店の注文住宅部門で営業・設計・コーディネーターを総合担当 2011年独立後、工務店「株式会社ヴィーヴル」「ヴィーヴル建築設計事務所」を夫婦で立ち上げる。