家づくりの土台は「その人を理解すること」
丸山耕平(丸山耕平建築設計事務所)
理想の家をつくるために、建築家とイメージを共有するまで何度も打合せをする――それはわかるが、具体的にはどんなふうにコミュニケーションすればいいのだろう。そんな疑問に対して、丸山氏は「どんな家に住みたいか、だけでなく、どんな映画や音楽が好きかといった人格そのものを伝えることが大事」と語る。
インタビュー、構成:建築家O-uccino編集部
──施主さんとの関係をどのように考えていますか。
理想は、一緒に考えてものづくりをする「パートナー」になることです。家づくりは建築家と施主さん共同作業であって、二人の力を合わせて一生懸命やることでいいものができると確信しています。施主さんは、要望をどう伝えればいいか、いろいろと悩む面もあるかもしれませんが、思い切りよく、何でもまずは言ってみてほしいですね。
──打合せでは、どんなことに気をつけていますか。
いつもお会いしてはじめに言うのは「何でも言い合える関係を作っていきましょう」ということです。そして、こちらが仕事を進めるときは、ちょっとしたことでも、どんどん施主さんにどう思うか聞く。そうやって、できるだけたくさん会う。互いに納得するまで、とことん話していく。そうしていった末に、やっとパーソナリティーを共有することができるようになると考えています。
──建物の好みだけでなく、人格まで理解しようとするんですね。
そんな大それたことと思わなくていいんです。たとえば、「どんな音楽が好きか」「どんな映画が心に残っているか」「どんな本を読んできたか」「休みの日はどんなふうに過ごすか」。こんなとりとめもない雑談が手がかりになって、だんだんその人のことがわかってくるわけです。そこまでいってはじめて、本物のパートナーになることができる。このようなパートナー関係を作るためには、「どんな家にすべきか」と頭で考えるんじゃなく、互いに「一緒にものづくりを楽しもう」という姿勢でのぞむことが大切だと思います。
──そういう関係を作った上で、どんな提案をしていきたいですか。
要望にもよるものの、私としては、今の住まいだけじゃなくて、将来的な住まい、後の世代への住み次ぎまで視野に入れた提案ができたらいいなと思っています。単純に「どんな家を建てるか」ではなく、もっと幅広い選択肢を提供したい。たとえば、リノベーションしたらすごくよくなる掘り出し物のマンションを一緒に探すなど、物件とのマッチングにも建築家としてどんどん参加してきたいですね。
丸山耕平(丸山耕平建築設計事務所)
1976年 大阪府生まれ。 1999年 筑波大学第三学群基礎工学類卒業。 1999年 住宅建設会社勤務。 2004年 KEN一級建築士事務所(建築家甲村健一)勤務。 2009年 まで設計・監理協力者として所属。 2005年 丸山耕平建築設計事務所設立。