機嫌よく暮らせる家が一番体にいい
中原賢二(有限会社設計処草庵)
健康にいい家とはなんだろう? 有害物質を含まない素材、暑さ寒さを緩和する構造、穏やかな気分でいられる間取り、他には……。
「自然健康住宅」をテーマにする中原氏に聞くと、次の言葉が返ってきた。
「機嫌よく自然体で暮らせる家が一番です」。単純に見えて深い健康住宅の秘訣を聞いた。
インタビュー、構成:建築家O-uccino編集部
――「自然健康住宅」とはどんな家のことですか。
ひとことで言えば「その土地の風土に合っていて、自然体で健やかに暮らせる家」ですね。
――なぜ、それを作ろうと思ったのでしょう。
20年ほど前のことですが、建築家として仕事をする中で、当時もてはやされていた高気密・高断熱の輸入住宅に対して「日本の風土に合っているのだろうか?」と疑問を感じたのが始まりです。
そこで有志で研究会を立ち上げ、メンバーと議論したり、昔ながらの家を見に行ったりして勉強を重ねました。その結果、昔ながらの家の方が、自然に即した暮らしをしていて、健康にいいと判断しました。
当時は、まだシックハウス症候群などの住宅の健康問題が取りざたされる前ですから、誰も理解してくれませんでした。しかし、90年代後半くらいから、世間の住環境に対する意識が高まるにつれて、理解が広がったのを覚えています。
――「自然健康住宅」は「伝統建築」ではないのですか。
伝統住宅はすばらしいのですが、台所が土間だったりして、現代の暮らしには合わない面もあります。それに、夏の過ごしやすさを重視しているので、冬はものすごく寒い。
高気密・高断熱の魔法瓶みたいな家はつくりませんが、だからといって伝統建築にこだわりすぎるのも問題がある。
というわけで「窓の気密性は高めるが、壁は呼吸する」というふうに伝統建築のいいところだけを使うようにしています。
――やはり木造の家がいいのでしょうか。
お客さんが気に入って暮らせることが一番大事なので、鉄筋コンクリート打放しが落ち着くというのであれば、鉄筋でプランニングします。しかし木造でも鉄筋でも、デザイン性の高いスタイリッシュな空間であることは大切です。
――お客さんの好みが大事なんですね。
打ち合わせでは、ご主人だけでなくご家族の意見も、うかがいます。子供からおじいちゃん・おばあちゃんまで、必ずです。
これが、後でもめないために重要なことですね。その点で、建築家は、家族みんなの意見を調整するコーディネーターだと思っています。
健康住宅という点でも、最終的には、家族仲良く機嫌よく暮らせることが一番体にいい。これが、どんな体にいい素材を選ぶかといったことより、はるかに大切なことなのです。
中原賢二(有限会社設計処草庵)
1962年 熊本生まれ、西宮育ち
1987年 設計処草庵 設立(2004年法人化)
1993年 日本建築文化研究会「社の極」 設立(2007年NPO法人化)
1997年 健康住宅友の会 設立