設計も施工も「粘り」で勝負する
金田圭二(金田圭二建築設計事務所)
どんな仕事でも、完成度を上げるには時間と労力がかかるもの。家づくりにも、打ち合わせから設計、工事まで、さまざまな工程があり、ひとつひとつの仕事が全体の出来につながる。そこで必要となるのが、金田氏の言う「粘り」だ。
インタビュー、構成:建築家O-uccino編集部
──打ち合わせでは、どんなことに気をつけていますか。
結論から言うと、建築家とクライアントの関係はフラットなものがいいと思っています。もちろん、クライアントの思いは建築家の思いより上にきますが、建築家として「なぜこう思うのか」ということは、詳しく説明します。そしてまたクライアントの考えを聞く。そうやって、互いの思いを引き出し合って、一緒に楽しく作っていこう、と。これが根本的な方針ですね。
──要望はどんなふうに反映されるのでしょう。
要望はすべてお聞きしますし、コストや法律といった諸条件とのバランスを考えながら、できるだけ実現したいと思っています。
その上で、大事だと思っていることは「粘り」ですね。
たとえば、設計の過程で1時間かかる部分があれば、そこに、5時間、6時間と粘って、たとえわずかでも完成度を上げる道を選ぶ。そういう積み重ねがあってはじめて、クライアントが喜んでくれる家が作れると思っています。
──「粘り」といえば、スポーツ経験も豊富と聞きました。
少年野球からラグビーに進んで大人になりましたから、一応、自分は体育系だと思っています。完成度に対するしつこさ「粘り」の原点は、間違いなくスポーツ体験にあります。
ラグビーと建築が通じるのは、ひとりひとり違う人たちが、協力するという点ですね。ラグビーでは、チーム全員、同じような人がいいのではなく、体の小さい人も、太った人もそれぞれ必要とされるわけです。
建築も同じで、施主さんと建築家、それに大工さん、電気工事をする人なども加えた全体のチームワークが重要だといつも思っています。
──クライアントと建築家の関係だけではないわけですね。
クオリティを上げるためには、全員の気持ちが大切です。
あまり表に出すことはありませんが、建築家にも当然、作家としてのわがままがあります。同様に、大工さんも職人としてすごいものを作りたいという気持ちがあります。
だから、大工さんに本気を出してもらうには、職人として「粋に感じる」ような設計をする必要があるわけです。「ここは難しいですけど、できますよね?」というような。
コミュニケーションひとつであっても手抜きはできません。家づくりに関わる全員の本気を引き出すためにも、「粘り」が大事なのです。
金田圭二(金田圭二建築設計事務所)
1969年 大阪府生まれ
1990年 武田則明建築設計事務所勤務
1993年 木村博昭/Ks Architects勤務
1997年 金田圭二建築設計事務所 設立