時代に新風を吹き込む建築家たち

2011.7.29

住み手の色に染まってゆく「余白のある家」

橋本健二(橋本健二建築設計事務所)

家は住む人や家族がいて、はじめてその魅力が出せる。仮に、誰も住んでいない住宅を見せられても、あまり感じ入ることはないだろう。橋本氏が「数年かけてその家族の空気が浸透していくような家を作りたい」と語るのも、そんな、家を家たらしめる住み手の暮らしを大切にしたいとの想いからだ。

インタビュー、構成:建築家O-uccino編集部

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──この事務所もリノベーション建築ですか。

明治時代に建てられた木造校舎をここに移築して、少しずつ改装しながらオフィスにしました。実際に昭和30年代まで小学校として使われていた建物です。18年前まで倉庫として使用されていた建物ですが、きちっと作られたものは活かしていきたいと考えました。「建てる」だけではなくて「残す」のも建築家の仕事だと思っています。

──その上で理想とする家はどんなものですか?

私は、家づくりでは「余白を残す」ということが何より大切だと思っています。建物が完成したそのときが終わりではなくて、2、3年でその家族の空気が浸透していくような、住んで1、2年後くらいからしみじみ「いいなあ」と思えてくるような感じを出せることを目指しています。

また、住み手、その人の匂いに染められた空間をどうつくるかを重視しています。無味無臭ではなく、その人の好みが伝わってくるような空間を作りたい。そのため、打ち合わせでは家の話に限らず、どんなファッションが好きか、どんな音楽が好きかといったその人の「想い」すべてを聞くよう心がけています。

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──「余白を残す」とは、たとえばどんなことですか。

まず、作りこみすぎない、デザインしすぎないといったことがあります。家族の空気が染み込むような場を残すことでしょうか。そして、廊下や階段などの部屋から部屋へ向かうときのアプローチも、ただ明るいだけではない光の入り方など、空間の効果を長い目で見て考える必要があります。

──これから家づくりをする人はどんなことを考えておけばいいですか?

まずは、「これが好き」「こういう感じが好き」と好みをはっきり持っておくことが大事だと思います。その上で、間取りだけにこだわる、機能だけを重視するというのではなく、すべてに主体性を持って参加してほしいですね。

橋本健二(橋本健二建築設計事務所)

photo 1959年大阪生まれ。1983年 大阪工業技術専門学校建築科卒業。1986-1992年 合田デザイン事務所。1993年 橋本健二建築設計事務所設立。1997年度 JCDデザイン奨励賞受賞「BAR 立山Ⅰ」。2000年度 JCDデザイン大賞受賞「BAR 橋本工務点」。2007年 ナショップ ライティングアワード 飲食部門入賞。2010年度 JCDデザインアワード入賞「高麗橋吉兆」。

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