心地よくて「存在感」のある家
有島忠男(有島忠男設計工房)
住んでいて楽しい家、幸せを感じる家がどんな家なのかを考えるとき、外観や内装、機能といったことを考えがち。しかし「心地よさや存在感を大切にしたい」と語る有島氏の言葉からは、たとえば玄関のドアを開けたときの感動やおどろき、リビングでくつろぐときの心地よさといったことも大切にしたい。そんな「目に見えないもの」を求める姿勢が伝わってくる。
インタビュー、構成:建築家O-uccino編集部
──「住み心地の良さ」をテーマにされていますね。
住む人の感じ方や価値観はみんな違うものだから、その人に合った「心地よさ」を味わえる家をつくりたいと思っています。他の人から見てカッコイイ家、高気密・高断熱のすごい家、というよりは、家に入った瞬間「いいよね」と思うような……つまり、家の見た目や豪華な設備といったものだけでなく、なにげない「心地よさ」を感じてほしいと思っています。
そんな住み手の想いを大事にした上で、街並みや景観と一体になった…家の前を通る人が「いいな~」ってふり返るような「存在感」のある家を作りたいですね。
──たとえば、どんなことでしょう。
住んでいて楽しい、幸せを感じるというのは大事なことですが、なんでも至れり尽くせりの家がいいとは限りません。情報過多のせいか、クライアントさんも「こういうのが幸せな家だ」と、画一的に思い込まされているような気がします。
それより、住む人がどんな価値観を持っていて、どんな暮らしをしたいのか、ということを考えることが大切だと思います。
「少し不便だけれど、それが楽しい!」ということもあるわけですから。
──暮らしを楽しむ、ということですね。
家をつくっているとき、「こんな使い方をしてくれるかな~」「こう使ってくれるとうれしいな~」と想像しながら、設計していくわけですが、実際にお住まいになり、私の想いをこえる使い方をされているのを見ると、すごくうれしい。
毎回、自分の家をつくる気持ちでやってるのですが、家が完成し喜んでもらうことができたときは、ホッとします。ただ、お引渡しのときは寂しいですね、私の手から離れてしまうわけですから。
それでも、しばらくして訪ねたときなど、住み手がその家での暮らしを楽しんでいるのを見ると、いい家ができたなって感じます。
有島忠男(有島忠男設計工房)
1958年 鹿児島県(種子島)生まれ
1977年 九州理工専門学校 建築学科 入学
1979年 九州理工専門学校 建築学科 卒業
1979~87年 福岡市内の設計事務所 2社に勤務
1987年~ 有島忠男設計工房 設立