時代に新風を吹き込む建築家たち

2012.04.27

家づくりを通じて「街に働きかける」

相坂研介(相坂研介設計アトリエ)

「建築家は積極的に街に働きかけていけ」。安藤忠雄氏に師事していた時代を振り返って、相坂氏がまっ先に思い出すのは、このメッセージだ。施主の要望を受けとめ、家族に長く愛される家を追究する一方で、その目は常に「街」を見据えている。

インタビュー、構成:建築家O-uccino編集部

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──「街に働きかける」とはどういうことなのでしょう。

直接言われたというより、安藤先生の仕事ぶりから学ばせて頂いたことが多いのですが。つまり「同業者や建築ファンに受けるような建築家ではなく、街=社会全体に受け入れられる建築家を目指せ」ということですね。安藤先生の下で働く中で、「建築を通じて社会と向き合うことこそ、建築家の存在意義だ」という想いが固まっていったことをはっきりと覚えています。

──家をつくるときには施主の要望もありますよね。

もちろん「想い」は100%受けとめます。ただ、施主がたまたま選んだ「言葉」を字面通り形にするような進め方は、結局施主のためにならず無責任だし、実は施主自身も望んでいません。だから私は、要望を聞いた上で、その奥底にある願いにいかに迫れるかが大切だと思っています。建築家は、施主が語る住宅への考えや暮らしの体験の中から、「本質的な意思」を見つけ出さなくてはなりません。

──実際に設計するときには、どんなことを考えるのですか。

意識しているのは「将来にわたり住み続けられる家をつくる」ということです。そのために基本性能以外の条件として、(1)シンプルで、(2)上品であり、(3)自由度が高い、という3点を重視しています。言い換えれば、飽きがこなくて、街並みに調和していて、ライフスタイルの変化に空間も合わせられる、といったことです。

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──家が街に繋がっていくわけですね。

世田谷区の宮坂に建てた住宅が、まさにそのようなケースでした。あるご家族の依頼を受け、2007年に家を竣工させたのですが、入居されてしばらくしてから思いがけない展開になりました。

何度か家を訪れた施主の兄夫婦から「弟(施主)の隣の土地を買うので設計を依頼したい」とのお話があり、さらにご両親まで「その隣に住みたい」と追加で設計を依頼してくれました。家が徐々に集まって集落となっていくように、2010年までに三世帯が暮らすようになったわけです。(写真下段右)

街を意識した家もやがて街の一部となり、新しい家がそれをならう…。そして、一つの家をきっかけに、バラバラに住んでいた血縁者が同じ土地に再び集うようになる…。

住んでからも施主やご親族に喜んで頂けたことも嬉しいですが、街を繋ごうと考えた家が、人をも繋いでいくこととなったという点でも、建築家としてとても誇りに思える仕事でした。

相坂研介(相坂研介設計アトリエ)

photo 1973年 東京生まれ
1996年 東京大学工学部建築学科 卒業。安藤忠雄建築研究所 入社
2002年 安藤忠雄建築研究所 退社
2003年 一級建築士事務所 相坂研介設計アトリエ 主宰
東洋大学ほか、非常勤講師も勤める。

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